ティーチングとコーチングの効果的な使い分け

少しブログをサボってしまいました。

この記事で書くのは、ティーチングとコーチングについてです。

世間一般に、コーチングが重要視され、ティーチングが悪く言われがちな風潮があるように感じています。しかしながら、コーチングもティーチングも一長一短があり、教える相手のステージによって使い分けるべき手法だと私は考えています。

当然、教える側の視点から見ると、ティーチングは得意だけどコーチングは苦手という方もいらっしゃるでしょうし、その逆もあるでしょう。

ですが、上述の通りティーチングとコーチングは使い分けるべきものであり、「自分の教育スタイルはこれだから」というのではなく、指導を受ける側がスムーズに受け取る方法を取るのが最良であると考えます。

ここからはティーチングとコーチングの解説から、私の考えを述べていきます。

①ティーチングについて

ティーチングは、学校教育から始まり、組織における人材育成など、「教育=ティーチング」といってもよいほど一般的に使われている、私たちにとってもなじみのある手法です。

平たく言えば、ティーチングとは、知っている人が知らない人に教える、できる人ができない人に教える指導法です。言ってみれば「自分が持っている知識、技術、経験などを相手に伝えること」と定義することができるでしょう。

ティーチングは、その特性上コミュニケーションの性質は基本的に教える側→教わる側の一方向になります。もちろん質問などはするでしょうが、あくまでも教わる側は受動的であることが特徴です。

ティーチングのメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

・一度に大勢の人数を育成できる

・やり方や価値観の統一を図ることができる

・速いスピードで育成できる

ティーチングのこうした特徴から、ティーチングが適しているのは、たとえば、新人に基本的なルールを教えるときや、緊急性が高いときなどになります。

ティーチングは、一方通行なコミュニケーションの手法ですから、同時に大勢の相手に同じ内容を学ばせることに優れています。また、基本知識やコンプライアンス、社内ルールというように、正解が明らかなことや、すでに実証されている方法を伝達する場合、教えられる側が考えたり、思考錯誤する時間を最低限に抑え、お互いにとっても、組織全体にとっても、生産性が高まると言えるでしょう。

一方、ティーチングの限界として、教える側の力量に大きく左右されることや、教わる側の能力や個性が発揮されにくいということが考えられます。

ティーチングについてはこんな読書記事も書いています→【人事の読書記録】「ロジカルティーチング」阿部淳一郎

②コーチングについて

次に、コーチングについて解説していきます。

コーチングでは、基本的に「教える」「アドバイスする」ということはしません。その代わりに、「問題に関する問いかけ」という対話を通して、相手自身の自発的な行動を促したり、アイディアや選択肢のヒントを与えたりします。それによって、教わる相手の能動的なアクションを強化していくのです。

コーチングのティーチングとの最大の違いは、「コミュニケーションが双方向であること」です。このコーチングの特性から、以下のようなメリットが考えられます。

・相手の考える力を育て、自発性や応用力、再現性を高められる

・相手の可能性を引き出すことができる

・相手の個性を活かすことができる

・相手の学習力自体を上げることができる

これらのメリットから、本人の答えを見つけるプロセスを学習させたい場合や、自発的な行動を促していきたい場合に、コーチングは最高の指導法と言えるでしょう。

一方で、コーチングにも限界はあります。ティーチングのメリットがそのまま逆に当てはまると考えていいでしょう。つまり、時間がかかる、一度に大勢を育てることには適さないといったことが考えられます。

基本的に、スピードが求められる場合にはコーチングはあまり向かないと言えるでしょう。ただ、時間や労力がかかったとしても、多様性や主体性を育てることに繋がり、最終的には高い成果に結びつく可能性が高いということは言えるでしょう。

注意したいのは、相手に知識や経験が乏しい場合に無理にコーチングをしたところで、何も出てきません。むしろ、相手は息苦しく感じたり、自信を失うこともあります。相手の能力をよく見極めることが、コーチングには求められます。

③どのように使い分けるか?

ここからは、実践的にどのようにティーチングとコーチングを使い分けるのか考えていきます。あくまで私見ですので、絶対的に正しいとは限りません。あしからず。

さて、まずは場合分けの条件として教わる相手の力量が大前提にあります。

職場に入ったばかりの新人さんにコーチングを使って指導しても、主体的に答えを導き出すのは難しいでしょう。そもそも答えを導き出すだけの元になる知識がないからです。これは教わる側にとっても辛い状況です。ただの教育放棄ととられかねないでしょう。

相手の力量が未熟な場合にはティーチングが有効です。ただし、答えを与えたうえで、なぜその答えが導き出されるのか?目的はなんなのか?ということを考えさせるのは非常に良いことだと思います。将来的に自分で独自の答えを生み出していく下地になるからです。

逆に、ある程度職場での経験を積み、通常業務の範囲は問題なくこなせる程度の力量を持った人を指導する場合です。

想像はつくとは思いますが、この場合はコーチングにシフトしていくべきです。やはり、どんな職場にしても最終的には自分で答えを導き出せる人材を育成していかなくてはなりません。ティーチングは、未熟な相手には非常に有効ではあるのですが、ある程度の力量が備わった相手にティーチングを続けていると、自分で考える能力が伸びません。

教わる相手の能力について書きましたが、もうひとつは教える案件の難易度です。

新人さんが難易度の高い案件に取り組む場合、これはもうティーチングしかありませんね。ここでコーチングを用いていると、取り返しのつかない失敗につながる可能性があります。

新人さんが難易度の低い案件に取り組む場合、基本はティーチングですが、要所ではコーチングも混ぜていってもいいかもしれません。上司の判断力が求められますね。

次に、経験のある人が難易度の高い案件に取り組む場合。これはまさにコーチングの出番です。上司と一緒に壁を乗り越えることで、部下の成長は大きくスピードアップするでしょう。

最後に、経験のある人が難易度の低い案件に取り組む場合。これはもう本人におまかせですね。上司も、全部の仕事を面倒見る必要はないので、案件の難易度・重要度が低ければさっさとお任せしてしまうのがいいでしょう。

まとめると、教わる相手の能力と難易度の組み合わせによって、ティーチングとコーチングは使い分けられるべき。という考えです。

 

④最後に

もう一度書きますが、ティーチングとコーチングはどちらが正しいというものではありません。フェーズと環境によって使い分けるべきものだというのが私の見解です。

ここを意識して使い分けられるかどうかは、良い指導者のひとつの条件と言っていいと思っています。

私も人を指導する立場に立った経験はありますが、この使い分けは簡単なようで難しいものです。能力と案件の難易度以外に、相手の感情という要素も重要になってくると考えています。

結局、教わる相手ひとりひとりに合わせて教える側のスタイルを調整していくことが求められているのですね。

おわり

OJTに関してこんな読書記事も書いています→【人事の読書記録】「対話型OJT」関根雅泰/林博之

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