この記事では自社に「優秀な人材」(あえてこの書き方をします)を増やすための方法である、採用と教育について考えます。
その企業が置かれている環境によっても最適解は違ってきます。
なので、これはあくまで私個人の弊社(従業員2,000人規模、製造業)の中での考えとして読んでください。
一般に「人材開発」という言葉を分解すると、大きくこの「採用」と「教育」に分けられるかなと思います。
では、どちらにより重点を置いて投資していくべきなのか、ということを考えていきます。
優秀さの二軸
まず、冒頭に書いた「優秀な人材」という言葉。
個人的にはあまり好きではありません。
その人が「優秀かどうか」は簡単に推し量れるものではないと思うからです。
偏差値が高ければ優秀?売り上げをたくさん上げていれば優秀?いずれも分からなくはないですが、ではそうでない人が優秀でないかというと、そんなことはないはずです。
「優秀」という言葉はよく使われますが、実に主観的です。
ほとんどの場合、「その人から見て」優秀なのです。万人が納得する優秀の基準なんてありません。
とはいえ、企業は「優秀な人材」を求めます。事業を発展させるためには当たり前です。
であれば、自社にとっての「優秀さ」はしっかりと定義する必要があります。
その定義を元に、採用なのか、教育なのか、どこを重視するのかを決めていくことになります。
優秀さを考えるときは、私は「スキル」と「マインド」の2軸があると思っています。
「スキル」は例えばTOEIC700点以上とか、定量的なものが多くなるでしょう。割と簡単です。
難しいのは「マインド」の優秀さ。これはなかなか測れません。
再びTOEICを引き合いに出すと、TOEIC500点とTOEIC800点だったら、800点が良いのは万人から見て間違いありません。
自社でどのようなマインドを持った人を「優秀」とみなすのか。
これを言葉で決め、さらには少なくともリーダークラスの共通言語として共有することが必要です。弊社は正直ここができているとは言い難いのが、痛いところです・・・。
投資の二軸
採用と教育、どちらに投資すべきか。
さらに、投資といっても二種類あって、「お金」を投資するのか「時間」を投資するのか。
時間=人件費でもあるので、厳密に企業にとっては両方お金かもしれませんが、ここでは違うものとして考えます。
以下、この二軸を使って、採用or教育×お金or時間の2×2、計4パターンについて、考えてみます。
それに対する私の期待値をA~Dの4段階で書きます。
採用にお金を投資する
私の期待値:D
低評価です。理由は以下の通り。
お金を投資すると、会える人数は多くなることが多いです。
多くの人の目に触れ、接触できるチャンスは増えます。
ですが、それは弊害ももたらします。
① 一人の応募者に掛けられる時間が限られる
② ①によって、大勢の応募者の中から自社にマッチする方を見つけられない
特に、マインドの部分がこの危険性が非常に高いです。スキルは資格や実績からある程度の判断はできても、マインドの優秀さを測るためにはそれなりの時間が必要です。
しかも、応募者一人一人へのケアも不足しがちになり、結局あちらから離脱されてしまう事態にもつながります。
実際に弊社でもお金「だけ」を掛けた採用施策はうまくいかないことが多いです。
インターネットで多くの人にリーチできる時代に、お金を掛けての数集めに価値はありません。
採用に時間を投資する
私の期待値:A
これが個人的には今後最も力を入れていきたい領域です。
理由は三点。
①スキルはマインドがあれば付いてくる
自社で大事にするマインドというのは各社各様だとは思うのですが、共通して求めることがひとつあります。
それは、「自身の成長のための努力を進んでできること」
このマインドは、どんな場所で働くにしても重要ですが、決して誰でも持っているわけではありません。
そして、このマインドを持っている人ならば、よほど高度な専門スキル以外の大抵のスキルは後から付いてきます。
②マインドを醸成するのは簡単ではない
人のマインドを変えるのはそう簡単ではありません。
教育ではあまり変わらないと思っています。その理由はここで書くと長くなるので、また別の記事で。
なので、①で書いた「成長マインド」を持っており、かつ自社が優秀と定義するマインドを持っている人材は、そう簡単に育てられるものではありません。
そういう人は、採用の時に見極め、口説き、仲間になってもらうのが一番早く、確実です。
③マインドを見抜き、すり合わせるのには時間がかかる
で、このマインドというやつは非常に難しくて、短時間の面接ではそうそう分かるものではありません。
適性検査などの定量的な結果も一つの参考にはなるでしょうが、やはり時間はどうしても必要です。
可能であれば、面接よりもインターンのような形で一緒に働いてもらうのが良いでしょう。
そして、こういう優秀なマインドを持った人は、引く手あまたです。
なので自社に魅力を感じてもらうためにはこちらも最大限の自己開示が必要です。
過度に飾るのは好きではありませんが、「弊社にはこんな良いところがある」「あなたと一緒に働きたい」というのをファクトベースで伝えるのは重要です。
それをしっかりやるのにも、時間がかかります。
自社の情報を伝えるコンテンツを練ったり、面談を繰り返したり。
そもそも、冒頭の「優秀な人材の定義」にもそれなりの時間が必要ですので、このような活動全体に関して時間の投資は必須と言えます。
教育にお金を投資する
私の期待値:C
「教育にお金を投資する」からパッと思いつくのは、外部の研修への参加を促すことです。
必要なスキルを手に入れるためには、近道になることも多いと感じています。
適切な研修先選びが超重要です。
また、社内の設備を整えることも社員のスキルアップに地味につながります。
パソコンを性能の良い使いやすいものに変えたり、最新の実験設備を導入したり。
スキルの成長を促すという意味では、悪くありません。
ただ、前述していますが私は「マインドがあればスキルは付いてくる」と思っています。
スキルなんて、誰しもゼロから学んでいるわけで、努力してもどうにもならないスキルはそんなに多くはありません。
弊社も階層別にOff-J-T教育とかやってはいるのですが、正直効果が出ているのか微妙なところです。
しかも、教育の効果の測定が難しいですよね。人事考課の結果やアンケートの結果などから見るのか、定性的に見るのか、いずれにしてもなかなか難しいです。
教育に時間を投資する
私の期待値:B
ここでいう「時間を投資する」の私のイメージは、「マインド教育」です。
具体的には、自社の経営理念やビジョンについて考え、行動に移せる機会を作ることです。
もちろん採用で自社に共感してくれる人だけを採用できていれば必要ないのかもしれませんが、なかなかそういうわけにはいきません。
何より、「理念やビジョンは言葉で唱えるだけでなく、社員一人一人の行動指針として根付いてこそ」です。
そのレベルに達するには、日常的に口を突いて出るぐらいに理念やビジョンについて考えることが必要です。
TOPもしくはTOPに近い人間と、自社の理念やビジョンに対する自身の行動について語り、フィードバックをもらう。
そういう時間の使い方は会社にとって有意義です。
SECIモデルでいう「共同化」の作業。形式知としてのスキルを伸ばすわけではありませんが、暗黙知の共有は社員の教育に非常に重要です。
TOPのマインドに社員がついて来れば、スキルもおのずと伸びていくことが期待できます。
これも定量的に効果を測ることはできませんが、TOPがこういう「考え方」を広める活動に多く時間を割く会社は強いなと感じます。
まとめ
採用×お金 → D
採用×時間 → A
教育×お金 → C
教育×時間 → B
という結果になりました。
採用×お金について補足すると、ここでは「採用活動」のみに焦点を当てていましたが、「給与水準」という意味でお金を投資するのであれば少し話は変わります。
お金は本質的なモチベーションにはなりませんが、とはいえ最低限は必要ですし、会社を選ぶ要素として大きなウエイトを占めていることは間違いないでしょう。
「選ばれる会社」であるためには、適切な水準の給与を提示することは必要です。
それも踏まえて、採用と教育であれば投資すべき対象としては採用に軍配が上がります。
教育が重要でないと言うつもりはないのですが、やはり教育でそう簡単に人は変えられないというのも感じています。
採用の際にいかに自社にとって「優秀な人」を見極め、入社してもらえるのか。
偉そうに書きましたが、まだまだ弊社の採用手法には改善の余地が山盛りです。
これからも「採用に投資」を続けていくことが必要ですね。
おわり
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