【人事の読書記録】「世界最高のチーム」ピョートル・フェリクス・グジバチ

この記事では「世界最高のチーム」の感想を書いていきます。

Googleで人材育成や組織開発に携わってきた著者が、Googleでの研究結果などを元に、チームのベストパフォーマンスを引き出す方法や考え方を解説している本です。

Googleのプロジェクトチームで研究された生産性の高いチームの特徴は以下の5つだそうです。

  1. 心理的安全性が高い
  2. 信頼性が高い
  3. 構造が明瞭である
  4. 仕事に意味を見出している
  5. 社会に対して影響をもたらすと思えている

中でも「心理的安全性が高い」が他の4つのベースになるとのこと。心理的安全性はかなりメジャーになった言葉ですが、この記事では心理的安全性にスポットを当てながらこの本を読んでいこうと思います。

心理的安全性とは

いろんなところでいろんな解釈を目にする言葉なのですが、ここではこの本から流用して、「メンバーひとりひとりが安心して、自分が自分らしくそのチームで働けるということ」とします。

自分が思ったことを安心して口に出せる心理的安全性が高いチームの方が、生産性が高くなるというのがGoogleの研究結果です。

では、実際に心理的安全性を高めるためにはどのようなことが必要なのか考えつつ、本書の中から印象に残った点を書いていきます。

愚痴やもめごとにどう対応するのか

本書の中では”愚痴やもめごとはチームにとってよいこと”としています。

例えばメンバーの愚痴にどのように向き合うか。「建設的」というのがキーワードだそうです。これはもめごとも同じです。愚痴やもめごとが出てくるときは基本的には負の感情が強く入ってきます。それを受け止めつつ、いかに最後に前向きなアクションに持っていけるかというのがポイントです。

ちなみに弊部署ですと、愚痴はそもそも基本的にはマネジャーの耳には入りません。まぁこの時点で心理的安全性の低さがうかがえますね笑

愚痴の中にはチームの至らないところが表れていますので、それを解決に導くことはチームを成長させることに繋がります。例えば、「Aさんが全然仕事を手伝ってくれない」という愚痴を、「ではAさんに手伝ってもらえばうまくいくのか?」「Aさんに手伝ってもらうためにはどんなことをしたらいいか?」という方向に導いていくのだそうです。

そうやって、愚痴を建設的なアクションに帰結させるように話を聞くのはマネジャーの腕の見せ所と言えそうです。もめごとも同様で、議論が収集できなくなっているのであれば、マネジャーが間に入ってファシリテーションする必要があるでしょう。

愚痴やもめごとも安心して言えるというのは心理的安全性の要素のひとつです。上の内容から、これができるかどうかはマネジャーの振る舞いがカギを握ると言えそうですね。

創造的なコミュニケーションのために

先ほどマネジャーの振る舞いがカギを握ると書きました。

実際に心理的安全性が力を発揮するのは会議などの場で忌憚のない意見が活発に交わされることだと思います。では、そんな「忌憚のない意見」に対してマネジャーはどう反応すべきでしょうか。

心理的安全性というと、ともすれば「なんでも承認して素通し」のような印象を受けるような気もします。ただ、それはそれでマネジャーの役割を果たしているとは言い難いです。

マネジャーがやることは「意見を確かめる」ことです。ときにはコーチングのように相手に問いかけ、ときには自分以外の人に意見を求め、出てきたアイディアが本当に意義のあるものかどうかを確認していきます。いきなり肯定も否定もせず、様々な可能性を吟味していくのです。

結果としてOKならもちろんGOですし、結果が芳しくないのであれば「ではどうすればよいのか」を考えるべきでしょう。

このプロセスは生産性を高めるためには必須と本書では書かれていますが、これを実際にワークさせるにはチームメンバーがMVVなどでしっかり同じ方向に向いていることが求められます。チームの共通言語として、チームの判断基準をメンバーに浸透させていくのもマネジャーの大事な役割と言えるでしょう。

またこのプロセスでは、アイディア自体はしっかりと確かめるとしても、「アイディアを出したこと」そのものは手放しで称賛することが大事だと私は思います。アイディアを出すという行為は基本的には好ましいことであると考えられるので、行動分析学的にこの行動を強化するためにプラスの見返りをしっかり部下に与えるのが重要です。

まずは人として信頼されること

当たり前と言えば当たり前ですが、心理的安全性を高めるためにはマネジャー自身が人として信頼されていなければなりません。繰り返しになりますが、やはりチームの心理的安全性についてマネジャーは非常に高い影響力を持っていると言えます。

ではそのためにはマネジャーはどのようにメンバーに接すればよいのか。シチュエーショナル・リーダーシップの考え方がこの本では紹介されていました。既知ではありましたが、あまり普段から実践を意識できてはいなかったので、良いおさらいとなりました。

シチュエーショナル・リーダーシップでは上のマトリクスのように相手の状態によってコミュニケーションのスタンスを使い分けます。リーダーシップの話になってくるとちょっとテーマがそれてくるのですが、コンティンジェンシー理論などからも見るに、リーダーシップはリーダーのオリジナルスタイルを貫くというよりは柔軟に状況に合わせて変化させていくことが求められると言えそうです。とくにVUCAの時代においては尚更でしょうね。

[blogcard url=”https://hrjob.info/contingency_theory_leadership/”]

そうやって接し方を変えていく中でも、リーダーシップの原則として優しさ・厳しさ・チャーミングさはどんなときも重要と著者は述べています。

特にチャーミングさ、難しいですね。私も日ごろから意識するものの、自分が出せていないときが多くて残念に思う時も多くあります。これに関しては地道なトレーニングが必要ですね。

まとめ

心理的安全性は最近ではかなり定着してきた概念ではありますが、まだまだ解釈が人によって違ったりして危険な部分もあるなぁという印象です。

決してぬるま湯ではなく、チームのパフォーマンスを上げるための考え方であることを念頭に置いて考えなくてはなりません。

また千里の道も一歩からで、今の時点で心理的安全性が低い組織が一朝一夕で生まれ変わったりはしませんから、地道なポジティブアクションを積み重ねていくことが大切だと感じました。そのためにも本書に書いてあったことは大いに参考にさせてもらおうと思います。

 

おわり

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