【5分で読める労働判例】東京電力(千葉)事件~思想・信条による差別~

東京電力(千葉)事件の概要

Y(被告)は日本最大の電力会社であり、Xら(原告)はYの従業員であった。

Yにおいては長らく、「共産党員または共産党支持者であると認定した従業員に対しては、昇格や昇給、賞与における査定を低くする差別的取扱い」をするという「反共労務政策」を行っていた。

そのためXらは低査定を受けてきたが、Yに対して不法行為に基づいて①財産的損害として約20年分の同期入社同学歴従業員との差額賃金、②差別全般による慰謝料、③名誉回復措置を請求して提訴した。

千葉地裁では反共労務政策に基づいて低い処遇を行ってきたことが推認され、労基法3条の違反となっている。なお、賃金以外にも差別行為があったという主張もあるが、基本的には賃金の処遇のみが違法と認定された。

【労基法3条】

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

それによって、①で請求した差額賃金の3割と、精神的苦痛に対する慰謝料の支払いがYに課された。

東京電力(千葉)事件のポイント

思想信条を理由とした賃金差別の違法性が争われた事件である。

労基法3条違反が成立するためには以下の点がポイントとして挙げられる。

  1. 労働者がある特定の思想信条を有していること
  2. この者が労働条件について差別されていること
  3. 使用者が思想信条を認識しながら差別を行っていること

これらを原告が主張立証することになるが、立証が成功しても更に使用者側が格差の合理的な理由があることを立証できた場合は労基法3条違反は成立しない。この場合は今度は労働者側が他の人との同等性を立証する必要がある。

Yは同時期に同種の訴訟を他にも受けており、いずれにおいても反共労務政策が賃金格差の原因のひとつであることは認定されている。

しかし、判決はすべて請求が認められたわけでもなく、各労働者の能力、業績や仕事上のミスの存在などによって判断が分かれている。すなわち、Yが格差の合理的な理由を立証できた場合は、請求が棄却されているということになる。

 

おわり

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