【5分で読める労働判例】長谷工コーポレーション事件~損害賠償予定~

長谷工コーポレーション事件の概要

建築工事請負等を営む会社X(原告)は社員の留学制度を設けていた。社内で募集を行い、応募があった社員を選考のうえ、合格者に渡航費、留学先学費、留学中の手当等を支給していた。Y(被告)はXの社員でこの留学制度を利用して米国の大学院に2年間留学した。

Yは留学にあたって、学位取得、帰国後のX業務への寄与貢献、一定期間を経ず理由なくXを退職した際の費用の返還を内容とする誓約書を提出していた。

Yは帰国後、2年4か月はXで勤務した後に退職。Xは誓約書で合意した一定期間の勤務が無かったとして、Yへ支給した留学先学費に相当する466万円余の返還をYに求めた。

長谷工コーポレーション事件のポイント

本件のポイントは労基法第16条。条文は以下の通り。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

これに反するかどうかが争点となったが、以下のポイントによって本件は16条には抵触しないとされ、Xの返還請求は認められている。

  1. 留学が業務ではなく自由な意思と選択によること
  2. 勤務を継続するかにかかわらず有用な資格・経験になること
  3. 上記2点から、労働契約とは別に金銭の貸借契約であるとみなせること

また、16条に関する裁判例では人身拘束の程度が重要になっており、資格取得後に一定期間の低賃金での労務提供を約束させ、それが適わない場合には援助相当額を返還させるというような内容では16条違反が認められているケースもある。

本件に関しては、留学を業務とは位置付けられないことから、労働契約に影響を及ぼすものというよりは、ザックリ言えば「プライベートの留学に会社がお金を貸した。ちゃんと働けば返済免除してあげるよ」というような内容と解される。

援助にどれだけ業務関連性があるかというのが重要なポイントになる。

 

おわり

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