※私が研修企画にあたって勉強したことや実経験を基に書いています。必ずしもすべての状況に当てはまる内容ではないことはご承知おきください。
「うちのオカンがな、なんか会社で変な集会に参加させられたらしいねん。けどそれが何の集会やったか全然思い出せへんらしいねんな」
「ほな俺も一緒に考えてあげるからさ、その集まりがどんな内容やったのか教えてよ」
「オカンが言うにはな、会社で必要な知識とか心構えを、学校の先生みたいな人が教えてくれたらしいのよ」
「ほー…社内研修やないかい。その特徴はどう考えても社内研修よ。すぐわかったやんこんなもん!」
「俺も社内研修やと思ったんやけどな、オカンが言うには、何のために集められたのかがよくわからんかったらしいのよ」
「ほな社内研修と違うかー。社内研修をするとき、というか何でもそうやけど”何のために”やるのかはめちゃくちゃ大事やからな。大きく分けると、行動をギアチェンジさせる『ディベロップメント型』、知識やスキルを学んでもらう『スキル・ナレッジ型』、ハラスメント防止とか必要に迫られてやる『エマージェンシー型』とかに分類できたりするんや。その中でさらに、この研修のゴールは何なのかをまずは明確にする必要があるやろな。例えば自社製品の基礎的な知識を一通りマスターしてもらうとか、若手から職場の中核にステップアップしてもらうための行動変容を促すとか。できるだけ具体的に細かく落とし込めると研修のイメージもわきやすい。もうちょっと言えば、そのゴールを達成するために本当に研修が適切なのかも議論されるべきやと思うな。そしてゴールは参加者にも共有するのが大事やで。だからオカンが何のために集められたのかわからんっていうのはおかしいなぁ。オカンは他に何か言うてなかった?」
「オカンが言うにはな、集まりのちょっと前に人事の担当者が上司にオカンのことをヒアリングしてたりしたらしいよ」
「社内研修やないかい。ヒアリングまでやるかはさておき、研修の受講者がどんな人か知っておくのは担当者として大事なことやからね。入社何年目で、どんな仕事をしてて、グループでの発言は積極的かとか、学びへの意欲はどうかとかね。グループワークの配置とかでも結構大事になるんよこれが。もちろん、研修の内容とかを考える際にも、受講者がどんな人なのかを正確に把握しておくのは重要やで。そんなもん社内研修で決まりよ!!」
「俺も社内研修かと思ったんやけどな、オカンはその集まりに呼ばれてることを当日の朝に知ったらしいのよ」
「ほな社内研修と違うかー。研修実施日の前から研修は始まってるのよ。研修前に必要となる知識をeラーニングで入れておいてもらうとか、研修の目的を事前に伝えて心構えをしてもらうとか。先に宿題で知識を入れて、集合研修では討議とかアウトプット中心にやるのは、反転学習と言ったりするで。ちなみに、行動変容を促す研修で、研修前に上司から受講者本人への今後の期待を伝えてもらうっていうのは、結構本人のモチベーションに好影響があったって風のうわさで聞いたよ。結局、どんな良いコンテンツでも本人が前向きに準備を整えて取り組まんことには実にならへんからね。研修前から研修当日に向けて本人に準備を整えてもらうっていうのは大事なことなんよ。そやのに当日の朝に知ったってことは社内研修とは違うかなぁ。オカン、他には何か言うてなかった?」
「オカンが言うにはな、グループワークがたくさんあって社内の今までしゃべったことない人と仲良くなれたらしいんよ」
「社内研修やないかい。研修のゴールはそれではないかもしれんけど、社内の人脈ネットワークを広げてもらうっていうのも結構大事やと俺は思ってるで。研修で一緒やったことで後から仕事のことで声掛けやすくなったり、他部署の意見をもらって視野が広がったり、良いことがいっぱいあるで。だからこそ、グループワークの班決めにはしっかりこだわりたいところやな。社内でやることのメリットのひとつよ。ほなやっぱり社内研修やないの、これはもう確実やで!」
「俺も社内研修かと思ったんやけどな、当日会場には人事の担当者は来てなかったらしいんよ」
「ほな社内研修と違うかー。講師は外部委託やったとしても、人事の担当者が事務局として居ることが多いからなぁ。これは単なる運営だけじゃなくって、研修が企画の狙い通りにできてるかを確認するためなんやで。あとは講師の先生とも研修中でも適宜コミュニケーションとったり、ワークに介入したり、研修の趣旨・意義を参加者に語ったり、実は人事担当者のやるべきことはたくさんあるで。そこまでの準備の中で講師とも良好な関係を築いておけば運営もスムーズやな。企画の意図をちゃんと講師に理解してもらって、工夫のある研修を一緒に作るのは人事担当者の仕事やで。だから、研修の場に人事担当者が来てないっていうことは社内研修じゃない可能性が高いなあ。オカン、他には何か言うてなかった?」
「オカンが言うにはな、集まりが終わった後に『今日の研修の満足度を教えてください』っていうアンケートに答えさせられたらしいのよ」

「社内研修やないかい!っていうか『研修』っていうワード出てきてるやんけ!研修後に満足度のアンケートを取るのは社内研修の大きな特徴のひとつや。まぁそれ自体は悪いことではないし、満足度が低ければそこには何かしらの問題があるって意味では役に立つ。けど、満足度が高い=良い研修っていうのはかなり勘違いで、本来最初に設定したゴールを達成できたかどうかで研修の成否は測られるべきやで。例えば知識なら、確認テストで何点以上取るとか、まぁゴールに応じた評価指標を設定する必要があるな。『満足してもらうこと』は研修のゴールではないはずやからな。満足度に一喜一憂してるうちは、ゴール設定ができてないと考えた方が良さげやで。その特徴は完全に社内研修よ!これはさすがに決まりよ!」
「俺も社内研修やと思ったんやけどな、オカンが言うには、集まりの翌日から特にオカンの仕事の中で何も変化はなかったらしいんよ」
「ほな社内研修と違うかー。研修で得た知識であったり、意識したマインドセットを職場に戻って継続して発揮してもらわないと意味が無いからね。多くの人は研修が終わった直後は『よし!これで明日からがんばるぞ』とか思ってるけど、明日になったら全部忘れちゃってるのよ。それを防ぐために重要になるのが上司の存在やで。職場に戻ったら人事担当者の目は届かへんから、上司を巻き込んで研修の内容をフォローする必要があるんよ。そのためには上司に事前に研修目的を伝えたり、研修後も面談やらOJTを通じて研修内容の定着を図ってもらったりと、上司との連携を深めないかんのやで。結局オカンも研修翌日から何も変わってないんやったら、研修を受けた意味が無かったやんけっていうことやで。それでは、社内研修とは言えんかもしれんなー。オカン、他には何か言うてなかった?」
「オカンが言うにはな、どうやら社内研修じゃなかったみたいやねん」
「オカンがそう言うなら社内研修と違うやんけ…俺が社内研修について熱く語ってるときどんな気持ちやったん?」
「申し訳ないなと思って」
「ほなほんまにわからへんやんけ…オカンの集まりは何やったんや…」
「オカンが言うには、評価調整会議とちゃうかって」
「絶対ちゃうやろ!もうええわ!」
「どうも、ありがとうございましたー」
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