私なりのリーダーシップ ~ニュータイプの時代に~

最近(と言っても数か月前)、リーダーシップに関する書籍を何冊か連続して読んでいました。そして先日ある方からおススメしていただいた書籍「ニュータイプの時代」(山口周さん著)が非常に面白く、それの記事も書かなきゃなあと思い立ったところ、リーダーシップの話といろいろ繋げて考えられる部分が多いように思えました。

そこでこの記事では私なりに理想とする「リーダーシップ」をまとめるとともに、それがニュータイプの時代に照らし合わせてどうなのかなとか考えてみます。あくまで、「私」自身の思いの話です。が、ブログとして発信する以上は読んでくださった方にも何か持ち帰ってもらえたらなと思います。

ニュータイプとは

リーダーシップの話に入る前に、「ニュータイプ」という言葉について少し説明します。 著者である山口周さんの考えるメッセージは以下の通り、引用します。

20世紀の後半から21世紀の初頭にかけて高く評価されてきた、従順で、論理的で、勤勉で、責任感の強い、いわゆる「優秀な人材」は今後「オールドタイプ」として急速に価値を失っていくことになるでしょう。一方、このようなオールドタイプに対置される、自由で、直感的で、わがままで、好奇心の強い人材=「ニュータイプ」が今後は大きな価値を生み出し、評価され、本質的な意味での「豊かな人生」を送ることになるでしょう。

ニュータイプの思考や行動様式の特徴として、山口さんが挙げているものからいくつか抜粋します。

  • 正解を探すのではなく問題を探す
  • 未来を予測するのではなく構想する
  • KPIで管理するのではなく意味を与える
  • ルールに従うのではなく自らの道徳観に従う
  • 綿密に計画するのではなくとりあえず試す

お分かりかもしれませんが、すべて前半に書いてあるのはオールドタイプの思考様式です。後半に書いてあるような思考・行動様式こそがこれからの時代に求められる、というのが山口さんの主張ですね。

ニュータイプに関してはとりあえずこれくらいを導入として、リーダーシップの話の中でもう少し具体的に触れていこうと思います。

リーダーシップとは

「リーダーシップ」という言葉の定義は非常にあいまいなまま使われていることが多いなと感じます。 「あの人はリーダーシップがあるね」みたいな言葉はよく聞きます。

では「リーダーシップがある」というのはどういうことができている状態なのか?どんな行動特性をリーダーシップとみなすのか?明確に言える人はあまり多くない印象です。なんとなく、「リーダーとしてうまくいっているように見える」から、「リーダーシップがある」と言ってしまっているのではないでしょうか。

誰しも一家言ある分野なのは承知なのですが、私の考えは概ね以下の4つに集約しました。

  1. 決断し、行動する
  2. 自分の美学を語る
  3. 未来を見据えて問題を設定する
  4. 自由を守る

この4つについて、詳細を書いていきます。

1. 決断し、行動するリーダーシップ

最初に書いたのはこれが一番大事だと思っているからです。

この、「決断し、行動する」ことを日常的にできるということがリーダーの素養だと思います。 そして、これは「立場上のリーダー」でない人でも誰でもできることです。例えば本当に小さなことで、高齢の方が電車に乗ってきたときに、「席を譲ろう」と決断し、実際に一言かけて譲る行動ができるかどうか。もはや仕事のことですらありません。そんな小さなことでも、仕事であれば自分の仕事のやり方をほんの少し変えてみるというようなことでも良いのです。

大事なのは「自分の意志を持って、自分の責任で」決断し、行動することです。 「決断する」というのは勇気と労力を伴います。本当の意味で「決断ができる」人は多くはありません。

そして、この決断の不足は組織の機能不全を生みます。ヒエラルキー型の組織の基本的な構造として、下層で処理できない、判断できない内容が上層に上がって処理されます。下層のリーダーにこの「決断し、行動する」力が無いと、大量の問題がどんどん上へ上へと送られます。そうすると、上層のリーダーのキャパシティをオーバーし、本来行うべきマネジメント業務や人材育成ができなくなります。その状態が続くとどんどん組織が足元から腐っていくでしょう。

この辺のことは↓の記事にも書いています。

[blogcard url=”https://hrjob.info/book_organization_strategy_human_resource/”]

決断ができないリーダーは組織のボトルネックになります。当然、そうした状況では部下からの信頼を得ることはできないでしょう。私がいる組織もまさに古い典型的な「日本の組織」という感じですが、「決断の数の少なさ」がボトルネックになっている感は否めません。

これに関しては、私は「立場上のリーダーでないときの経験」が重要だと思っています。リーダーの立場にいないときに、如何に「自分で決める」経験をしてきたか、「決断はリーダーがするもの」と決断を他人に丸投げしていなかったか。それによって決まるように感じています。 ヒエラルキー型組織で、上司の判断・指示を仰ぎ続けているとそのような経験はできません。上司からも適切な権限移譲をし、部下の判断を尊重し承認するような育成をしていく必要があります。

そうでないと、「自分で決める」経験をしないまま部下は育ちます。そんな部下が今度は上司の立場になったとき、果たして決断できるでしょうか。今までそんなことをしてきていないのに、いきなり酷な話だと思います。そうやって、どんどん「決断できない組織」が作られていきます。 リーダーとして「決断する」力を発揮するためには、立場上のリーダーでないときから「自分の仕事については自分がリーダーである」という自覚をもって、「自分で決める」練習をする必要があります。

そして、それができるような組織の環境づくりが重要です。その環境づくりというのは、例えばプロジェクト単位でのマネジメントをマネジャーの役職に無い人に担ってもらうなどの方法が考えられるでしょう。小さな単位からリーダーシップを鍛えていくのは有用な方法であると思います。アメーバ経営のような、小さな単位の組織に自律性を持たせる手法も効果があると考えます。

参考↓

[blogcard url=”https://hrjob.info/book_fail_essence_ww2_human_resource/”]

決断には相応の「責任」が伴います。決断を避けるということは、その責任から逃げるということでもあります。逃げない強さがリーダーに必要なのはもちろんですが、今後はその「責任」というのも組織の中ではよく考える必要があると今回感じました。

それは、先の不透明なVUCAの時代において、過去のように「精緻な計画を立ててそれを実行していく」という決断ではなく、「とりあえずやってみる」という決断が求められているからです。 日本人は「責任」という言葉が好きです。「責任感」というのは美徳として扱われます。ですが、過剰な責任感は時としてフットワークを締め付けます。「とりあえずやってみる」を阻害しないためにも、失敗を許容できる度量を組織の中に持たせることは、ニュータイプの活躍の場を作るという意味でも非常に重要であると考えます。

2. 美学を語るリーダーシップ

少しニュータイプの説明のところでも触れていますが、変化の激しい現代には、実状にルールが追い付かないということは往々にして起こります。 GAFAと法規制の戦いなどはその良い例かと思います。

つまり、決められたルールの通りに行動すれば良いわけではなく、そのルールが間違っているかもしれない時代なのです。 こういった状況で、リーダーに求められるものは「自分の美学」を自分の言葉でメンバーに語り、それを元にしてメンバーを「導く」ことだと思います。もちろん、組織の構成員であれば自分の美学だけでなく「組織の美学」もその要素として含まれる必要があるでしょう。 そうした美学を構築し、ルールに従うのではなく美学に従う。平たく言えば、「自分はこうしたい」という思いを明確に持ち、それを口に出すことを躊躇しないというのが、リーダーの大事な資質です。

リーダーという立場にあれば、つらい決断を下すこともあるでしょうし、それでも決断しなければなりません。そんな時に、自分の決断を軸になって支えてくれるのがこの「美学」なのかなと思います。 もちろん、メンバーにはメンバーの美学があり、時として衝突することもあるかもしれません。けれど、それを対話を重ねてすり合わせ、統一していくのもリーダーの役割です。

統一された美学を持ったチームは、外部環境が不安定な中でも迷うことなく突き進むことができます。

3. 未来を見据えて問題を設定するリーダーシップ

これは、「ニュータイプの時代」に書いてあって本当に共感しましたし、自分としても大事にしたいと思いました。

現代には「問題解決」の手法は溢れかえっています。様々なフレームワークがありますし、過去から蓄積されてきたノウハウもたくさんある。ロジカルシンキング等も普及し、多くの企業が「問題解決」の能力を伸ばそうとしています。

一方、そうやって多くの問題が解決されてきた現代において、私たちは解くべき「問題」を見失いつつあるというのが山口さんの見解です。モノが不足していた一昔前と違い、少なくとも日本においては多くの人が物的な側面においては満たされています。企業においても同様で、テクノロジーの急速な進歩などによって、この20年ほどで解決された問題がたくさんあるでしょう。 そして「本当に解くべき問題」を見つけることが難しくなってきているのです。

そういう意味でもリーダーシップとして発揮することが必要なのは、「本当に解くべき問題」をメンバーに提示する力だと思います。問題を解くのは、メンバーにやってもらうのが良いです。「問題を解く力」が必要なくなっているわけではありませんし、問題が解決できれば達成感を味わうこともできます。 しかし、「問題を設定する」という行為は、それだけでは達成感もなく、しかも深い思考を必要とするのでとても大変なことです。リーダーがやらなければ、メンバーにそこまで求めるのは難しいだろうと思います。 そのためには、前章の「美学」をしっかりと持っている必要がありますし、その美学に反すること=重要な問題であると認識することが可能です。美学を持たないリーダーには本当に解くべき問題を設定するのは難しいのではないでしょうか。

また、ニュータイプの特徴として山口さんは「未来を予測するのではなく構想する」という特徴も挙げています。これも、変化の激しい時代にほとんど当たらない未来予測に身をゆだねるのではなく、「自分はこうしたい」という確固たる姿を描き、それを実現するためにどうするかを考えるという意味で、やはり「美学」が重要な考え方です。ニュータイプ時代に通用するリーダーは、ある意味「わがまま」であるのも重要なのかもしれませんね。

4. 自由を守るリーダーシップ

この「自由」というのは、自分の自由でもありますし、メンバーの自由でもあります。 「サーバント・リーダーシップ」の中にこんな記述があります。

権力は、個人が自由な道を歩む機会や選択肢を与えるために使う

サーバント・リーダーシップは「奉仕する」というのがキーワードですが、「奉仕」とは何なのかということもよく考えなくてはいけません。メンバーのお手伝いさんになればいいのかというとそうではないはずです。

私が思うに、メンバーの自由を守るために適切な権力を行使することこそがサーバントとしてのリーダーシップです。もちろん自分のためでもなければ、会社のためでもありません。メンバーが自由に、楽しく、全力で働くために自分の力を行使するのです。 これは時には自身にはつらい決断の場合もあるかもしれませんが、先述の美学にのっとり、そしてメンバーのためであるならば断固として、権力の行使を実行するべきだと考えます。

これは、君主論をはじめ多くの書籍で同じような内容が言い方を変えて書かれています。 「権力の行使は慎重に、公平に。けれど行う時は断固として、徹底的に」 そして、ニュータイプに絡めてみると、ニュータイプは自由を好み、高いモビリティを発揮するのも特徴のひとつです。縛られることを嫌い、自分なりの美学を持っています。そういう同僚や部下がこれからどんどん増えるでしょう。

今は様々な技術革新によって新しいことに挑戦するハードルはどんどん下がっています。多くの企業は「イノベーション」を起こそうと躍起になっています。そんな中で、部下の自由を奪うことは大きなマイナスです。部下に自由に動いてもらうためにも、リーダーはサーバントとしてメンバーを包み込むことが求められるのではないでしょうか。

「イノベーション」という言葉が出てきたので少し触れておきますが、イノベーションはあくまで手段であって、それ自体は目的ではありません。まずは解決すべき大きな問題があって、それを解決した革新的な手法が結果として「イノベーション」と呼ばれるのです。イノベーションそのものを最初から目的にしては、イノベーションは生まれません。まずは問題ありき。そんな時に、必要なのが前章の「適切な問題を設定する力」なのだと思います。  

まとめ

今は私は部下を持つ立場ではないのですが、採用の仕事ではかなり大きな権限を持たせてもらっていますし、後輩をまとめながら仕事をしていくことが多いです。

日ごろの仕事でもとても役に立つ勉強ができたし、自身のリーダーシップに対する考えを整理できたのはとても有意義でした。 前職で部下を持っていた時に、こんなことを考えられていたら・・・もっといろいろできたことがあったのかもしれないなあと、書きながら少し後悔したこともありました笑

もちろん、この考え方は今現在の私のものですし、また5年後10年後にこの記事を見返してみて、その時はよりレベルの高い考え方が自分に身についているといいなあと、未来の自分に期待します。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

参考文献

今回の記事を書くにあたって読んだ本です(順不同)

「ニュータイプの時代」山口 周

「採用基準」伊賀 泰代

「すぐれたリーダーはみな小心者である。」荒川 詔四

「サーバント・リーダーシップ」ロバート・K・グリーンリーフ

「ザ・会社改造」三枝 匡

「君主論」ニッコロ・マキャベリ

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