労働判例ザックリまとめ~下関商業高校事件~


この記事では、退職勧奨に関連する案件の中でも重要な、表題の判例を取り上げます。

退職勧奨は労務担当者としても高難易度かつ重要な仕事です。

私も自身での経験が無いので、なかなかイメージがしにくいのですが、判例などの勉強で法律の知識を付けることが重要です。法律を盾に取る必要がどうしてもありますので。

とはいえ、なかなか経験したいと思っても経験するものでもない業務なので、悩ましいですが・・・

下関商業高校事件の概要

下関商業高校に勤務する2名の教員X1、X2は教育委員会の人事異動方針による退職勧奨の対象者となり、校長から退職の打診をされました。

しかし2名とも退職する意思がない旨をその時点で表明していました。

ここで、教育委員会は職務命令としてXらを呼び出し、約3ヶ月の間に十数回にわたり退職を勧奨し、その際に「今年はイエスを聞くまでは、時間をいくらでもかける」「組合が要求している定員の大幅増もあなた方がいるからできません」などと発言。

その他にも、退職問題の未解決を理由にしてXらに不利益な取り扱いをしたり、拒否されて発令にはいたらなかったが教育委員会への配転を提示するなどしました。

最終的にそれらの事実関係を元にXらが教育委員会を相手に違法な退職勧奨を理由とする損害賠償を求めたのが本件です。

下関商業高校事件の判決

一審判決では、次のように述べてXらの請求を一部認容(X1に4万円、X2に5万円)

以下、重要ポイントのみ抜粋です↓

使用者は退職の同意を得るために適切な種々の観点からの説得方法を用いることができるが、いずれにしても、被勧奨者の任意の意思形成を妨げあるいは名誉感情を害するごとき言動は許されない。

被勧奨者がはっきりと退職する意思のないことを表明した場合は、その後の勧奨がすべて違法となるわけではないが、新たな退職条件を提示するなどの特段の事情が無ければ、いったん勧奨を中断して時期を改めるべき。

勧奨の回数および期間について一概に決めることは難しいが、被勧奨者が希望する立会人を認めたか否か、勧奨者の数、優遇措置の有無などを総合的に勘案し、全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられたか否かがその勧奨行為の違法性を判断する基準になる。

ポイントは被勧奨者の任意の意思形成を妨げていないか、すなわち「退職強要」となっていないかですね。

教育委員会は控訴しましたが、高裁でも理由の一部を加除、訂正するにとどまり、原審の判断を支持。

さらに上告しましたが、上告は棄却されました。

学び

まず、使用者が労働者に対して退職を勧奨するのは基本的には自由です。

しかし、一審判決にもある通り、自由な意思形成を妨げたり、名誉感情を侵害すれば不法行為として損害賠償を求められる可能性はあります。

例えば、本件でも少し出てきていますが、配転命令をはじめとする使用者の権限の行使と並行することによって退職を促したり、誹謗中傷・いやがらせをしたりするなどは違法な退職勧奨になる可能性が非常に高いです。

また、勧奨の回数においても、被勧奨者が退職の意思を固めないからといって、不必要に何度も勧奨の場を設けることも、不当に退職を強要しているとみなされることもあります。

一方、退職勧奨が被勧奨者の業績や勤務態度の悪さに起因すると認められる場合は、ある程度強度の退職勧奨をすることも違法ではないとする事案も見られます。

ちなみに、退職勧奨が不法行為に該当した場合は、人格や名誉を傷つけられたり、自由な意思決定に干渉されたことによる苦痛に対する慰謝料請求が認められるにとどまり、金額も20万円から30万円程度が多いようです。

被勧奨者側としては、退職勧奨に応じる意思が一切ないのであれば、明確にそれを最初に示すことが大事になりますね。

それを示したうえでも強硬に退職勧奨してくる場合は、かなり違法性が高くなってきそうです。

退職勧奨に関する他の判例を見てみても、普通にイジメみたいなことがいっぱい出てきますので、何とも言えない気持ちになります。

退職勧奨はしなくて済むならそれに越したことはありませんが、世間の情勢的にも退職勧奨の絶対数は今後増えていくのだろうなと感じますね。

特に法律を学んで理論武装しておく必要が大きい分野です。

 

おわり

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