このブログでも労務に関連する記事は書いてきていますが、今回はそもそも労務担当者って何しているのかよく分からねえ、という方向けに「労務とは」の内容を書いた記事です。
基本的な内容ですので、人事としてある程度経験を積まれた方が読んでも新しい情報はありません。
労務に少し関心がある、とか、新しく人事担当者になったという方向けに書いていきたいと思います。
こんな記事も書いてます→退職代行とは?使ってもいい?やっぱり自分で言うべき?
労務管理の重要性
労務という仕事は決して目立つものではありません。
それゆえ、残念なことに軽視されやすいのは事実です。
ですが、私は個人的には採用と同じくらい、もしくは採用よりも労務管理は重要だと考えています。
なぜなら、例えどんなに優秀な人を採用してきても、しっかりした労務管理体制が無ければそれが不満のタネになり、離職の可能性が大きく上がるからです。
特に昨今その重要性は増してきています。そう考える理由は以下の3点です。
①終身雇用の考え方が希薄になり、労使の緩かった関係からシビアな契約に基づいて働く雰囲気が少しずつ出てきている。
②働く人の価値観の多様化、グローバル化が進んできて、暗黙の了解が通用しにくくなってきている
③社会が求めるコンプライアンス意識が一昔前に比べると明らかに高い
このような状況下で、労務管理がしっかりしていない会社はどんどん離職が増えますし、トラブルに巻き込まれる可能性も上がってきます。
また、既に始まっている働き方改革による法令改正。
この対応はしっかり行っておかないと今後問題が起こる可能性が高く、一段と労務担当者の重要性を上げてきています。
労務担当者の仕事
労務とは、ということを語るうえで、まずは労務担当者が普段どんな仕事をしているのかを書いてみます。
以下に挙げたのはあくまで代表的なものであって、これ以外にも労務の仕事は多岐にわたります。
勤怠管理
社員の出退勤時間、休憩時間、時間外労働、欠勤、休日出勤などなど、把握すべき項目は多岐にわたります。
何らかの勤怠管理システムを使用してこれらの記録をとっている会社がほとんどでしょう。
しかし、残念ながらシステムに任せっぱなしにできるものでもありません。
勤怠は本当にイレギュラーのオンパレードですし、システムだけで対応しきれない事案も度々発生します。
そんな時にも正確に対応し、労働基準法や三六協定で定められた勤怠のルールをしっかりと守るのは労務担当者の重要な仕事です。
現場の管理者の教育がしっかりできていないと、「三六超えちゃいました・・ごめんなさい」とか平気で事後報告してきますから、大変です。
また、こちらも働き方改革によって、時間外労働の上限や有給取得など、今までよりも管理がシビアになっていますので、スピード感のある対応が求められます。
給与計算
上述の勤怠データを元に、労務担当者が毎月の給与を計算します。
ですが、これも勤怠データだけではなく、様々なデータが複合して計算されるのが常です。
ややこしい手当やら、給与外の支給、控除、各種税金の天引き、などなどややこしい処理が盛りだくさんです。
これも何らかのシステムで運用するのが一般的ですが、大抵その会社独自の様々な要素がありますので、市販のシステムをそのまま使えばよいというようなものではない場合が多いです。
ミスが許されない処理であるにもかかわらず、非常に複雑かつ難解。
最近では外注する会社も増えてきていますが、個人的には給与計算は内製でやるべきと考えています。
実際に問題が起こったときには、「外注してるから知らん」では通りません。そういう対応のノウハウが社内に溜まっていかないのは非常に危険です。
給与計算をきれいにまとめられる労務担当者は非常に価値があります。
給与計算はミスが無くて当たり前。毎月ノーミスでこなしても誰からも褒められません。
社員の皆さん、毎月間違いなく給与が支払われるのは当たり前と思っていないでしょうか?
もちろん当たり前ではあるのですが、その当たり前の裏に労務担当者の多大な努力があることをどうか知っていただきたいです。
社会保険・労働保険の手続き
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険、会社員は様々な保険で国から守られています。
ほとんど無いとは思いますが、労務担当者(会社)がこれらの手続きを怠った場合、社員は大変な不利益を被ることになります。
勤怠管理や給与計算に比べれば難しさは低いといえますが、これらをヌケモレなくきっちりこなすのも労務担当者の大切な仕事です。
ハラスメント防止
昨今、特に重要度が増してきている案件です。
特に、今年の6月から職場におけるパワーハラスメント防止措置が事業主に義務付けられますので、不十分な会社は対応が必要になります。
労務担当者に求められる資質
では、そんな労務担当者にはどのような資質が求められるでしょうか。
私なりに思うところを書いてみます。
高い専門知識
当然ですが、労働関係の法令の知識なしに労務担当者は務まりません。
しかも、上述の働き方改革のように毎年のように法令は改正されていきます。
それにキャッチアップするためには、絶えず勉強と情報収集を続ける必要があり、そういった知識が労務担当者に無ければ、会社は知らず知らずのうちに法令違反をしてしまうことになりかねません。
口の固さ
労務担当者が扱う情報は、基本的に個人情報のオンパレードです。
社員のあまり他人に知られたくないようなプライベートな事情も目に入ってきます。
そんな情報を給湯室で噂にしてしまうような人には、間違っても労務担当者は任せられません。
業務上知りえた情報を絶対に外に出さない姿勢は必須です。
対人折衝能力
労務担当は、事務処理ばかりではありません。
時には社員と重たい話をしなければならないこともあります。
退職勧奨などは最たるものですが、それ以外にも様々な労務トラブルについて社員の相談を受け、会社を代表して交渉窓口に立ちます。
その際にしっかりとルールに基づいて、相手を納得させることができる対人折衝能力は労務担当者の重要な資質です。
労務がしっかりしている会社は強い
いろいろと労務が大変そうな感じで書いてきましたが、労務担当者がしっかりしている会社は強いです。
労務管理がしっかりできてるからといって、直接業績につながるわけではないですが、社員が自身の業務だけに集中できる環境を作り出すことができます。
管理職が労務トラブルの対応に追われていたり、一般社員がサービス残業に不満を持っていたりするような状態では、100%の力を発揮できているとは言い難いでしょう。
また、上述しましたが離職率のコントロールにも労務管理は重要な意味を持っています。
目立たないゆえに軽視されがちではありますが、労務管理がしっかりしている会社こそがこれからの変化の激しい時代に強くなっていくのではないでしょうか。
おわり
人事評価についてこんな記事も書いてます→ 人事評価の「公平」と「公正」の話
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