雇用保険法の目的と事業
雇用保険法とは労働者の失業時の、生活保障を中心とした総合的な保険制度です。日本国憲法で保障されている勤労間の確保のために、国の政策義務がふたつあります。
労働市場の整備と失業時の生活保障です。
労働市場の整備のために、主に年齢制限の禁止を規定した労働施策総合推進法があります。一方、失業時の生活保障を担うのが、雇用保険法です。雇用保険法は労働者が失業した場合等に必要な給付を行います。
また、労働者が職業に関する教育訓練を受けたとき、労働者が子を養育するために休業した場合にも必要な給付を行います。
それによって、労働者の生活と雇用の安定を図り、求職活動をサポートします。また失業の予防、雇用状態の是正と雇用機会の増大、労働者の能力の開発と向上、その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とします。
[blogcard url=”https://hrjob.info/5min_precednt_keireki_sasyo/”] [blogcard url=”https://hrjob.info/5min_precedent_nihonposting/”]雇用保険法の給付の概要
雇用保険のメインの機能は失業保障です。その中でもメインとなる下の4種類の給付を失業等給付といいます。
- 求職者給付
- 就職促進給付
- 雇用継続給付
- 教育訓練給付
育児休業の際の育児休業給付金も、雇用保険から出ます。
また雇用安定事業と能力開発事業も雇用保険の重要な役割の1つです。
雇用保険法の管掌
雇用保険は政府(厚生労働省)が管掌します。そして厚生労働大臣の権限の一部を、都道府県労働局長に委任できます。さらに都道府県労働局長は公共職業安定所長に委任できます。
事務の一部は都道府県知事が行うことができます。市町村はできないことに注意が必要です。そして都道府県知事が行う事務は、能力開発事業の一部の事業の実施に関するものに限定されます。
[blogcard url=”https://hrjob.info/milk_boy_syoubyouteatekin/”]適用事業について
雇用保険は原則として労働者を雇用している事業はすべて強制適用事業です。強制適用事業には国や都道府県市町村等といった役所も含まれます。
ただし例外があります。
- 個人経営
- 農林水産業
- 常時5人未満
上記三つをすべて満たす場合は、暫定任意適用事業となります。
ちなみにこの時、常時5人以上かどうかがポイントになります。常時5人以上とはその事業で雇用する労働者の数が年間を通じて毎月毎月5人以上であると言うことを指します。暫定任意適用事業は、厚生労働大臣に申請し認可を受けることによって適用事業となります。
適用事業に該当する部門と、暫定任意適用事業に該当する部門を両方とも持っていると少し複雑です。それぞれ独立性がある場合は、適用部門のみが適用事業となります。独立性がない場合は、メインの業務が適用部門である場合は事業全体が適用事業となります。
雇用保険の被保険者
雇用保険の被保険者は、適用事業に雇用される労働者で適用除外でない者です。被保険者の種類には、一般被保険者、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者の4種類があります。
雇用保険の適用除外になるものの要件を1つずつ見ていきます。
① 1週間の所定労働時間が20時間未満である
この20時間は、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合は、加重平均より算定された週当たりの所定労働時間を使います。
1ヵ月の単位で定められている場合は、その時間を12分の52で割った時間を使います。
所定労働時間が1年間の単位でしか定められていない場合は、その時間を52で割った時間です。
つまり、なんとか計算して1週間あたりの所定労働時間を割り出すのです。
この条件は高年齢被保険者と日雇労働被保険者は当てはまりません。日雇労働者にはそもそも所定労働時間という考え方が馴染みません。また、高年齢被保険者の場合は、特例として次の条件の全てに該当して、厚生労働大臣に申し出た日から高年齢被保険者となる特例があります。
- 2つ以上の事業主の適用事業に雇用される65歳以上の者
- 1つの事業主の適用事業における1週間の所定労働時間が20時間未満である
- 2の適用事業の1週間の所定労働時間の合計が24時間以上である
② 同一の事業主の適用事業に、継続して31日以上雇用されることが見込まれない
これは前2ヶ月の各月で18日以上通り同一の事業主の適用事業に雇用された者、もしくは日雇労働者で一定の地理的要件を満たすものは適用除外されません。
また当初の雇い入れ時に31日以上雇用されることが見込まれなくても、その後31日以上雇用されることが見込まれるようになった場合は、その時点から一般被保険者または高年齢被保険者となります。
③ 季節的に雇用される(4ヶ月以内の期間を定めて雇用される者or1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満であるもの)
ただし所定の期間を超えて引き続き同じ事業主に雇用されるものが、通算して4ヶ月を超える期間を新たに予定された場合は、その定められた期間を超えた日から被保険者資格を取得する。
④ 学生
ただし卒業を予定していて適用事業に雇用されて卒業後も引き続き雇用されることになっている者、休学中の者、定時制の家庭に在学する者は生活のために働いているということが認められるため、適用除外はされません。
⑤ 船員であって漁船(政令で定めるものに限る)に乗り組むため雇用される
この漁船はベーリング海のカニ漁船のようなイメージです。2~3ヶ月で10,000,000円を稼ぐような人たちです。この場合、雇用の安定は必要ないと言う考えからですね。
⑥ 公務員で離職した場合の支給される初給与が求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる
特に国家公務員は当然にこの適用除外の対象となります。また、市町村等の事業に雇用される者は、国の出先機関である都道府県労働局長の承認を受けた場合適用除外となります。雇用保険は国の制度なので、国の出先機関である都道府県労働局長の承認が必要です。
⑦ その他被保険者とならない場合
会社も代表取締役は被保険者ではありません。取締役は原則被保険者ではありませんが、会社の部長等、労働者的性格も強い者は、雇用関係があると認められる場合、被保険者になります。
また同居の親族も扱いが他の労働者と同様である場合は被保険者になります。
家事使用人は原則保険者になりませんが、主として家事以外の労働に従事する場合は被保険者になります。
国外で就労するものは、現地で採用の場合は国籍問わず被保険者になりません。ただ国内の事業主との雇用関係が継続している場合は被保険者になります。
日本に在留する外国人原則は被保険者になります。例外として、外国公務員及び外国の失業補償制度の適用を受けているものは、被保険者になりません。
長期にわたって欠勤を続けている者でも雇用関係が存続する限りは賃金の支払いを受けていなくても被保険者となります。
授産施設の職員は被保険者になりますが、作業員はなりません。
派遣労働者は原則として派遣元で被保険者となります。この場合の条件は基本的には一般被保険者と同様です。
複数の事業主に雇用されるものは、メインの賃金を受けている1つの雇用関係についてのみ被保険者として扱われます。
雇用保険の被保険者資格の取得と喪失
資格の取得は、適用事業所に雇用された時、暫定任意適用適用事業が労働者の増加などで適用事業になった時、暫定任意適用事業の事業主が新加入の認可を受けた時は、その日から資格を取得します。
資格の喪失は死亡した日や離職した日は翌日から喪失となります。これは死亡した日や離職した日は、生きていた日もしくは在職していた最後の日ともみなされるからです。
資格取得と喪失の届け出は管轄公共職業安定所長に提出します。事業主は必要な照明を速やかにしなくてはなりません。また要件を満たさなくなった場合の申し出は、事実のあった日の翌日から起算して10日以内に、届出書を管轄の公共職業安定所長に提出する必要があります。
賃金について
雇用保険における賃金とは労働の対象として事業主が労働者に支払うものを言います。ただし通貨以外のもので厚生労働省令で定める範囲外のものは除かれます。
注意すべき点は、健康保険の傷病手当金に付加して事業主から支給されるような金額は、恩恵的な支給とみなされて、労働の対償ではないので賃金に該当しない。臨時に支払われる賃金3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金等、賞与のような性格のものは雇用保険料控除の賃金に該当するというところです。
おわり
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