「人事はサービス部門」という言葉の気持ち悪さ

「人事はサービス部門」という言葉、聞いたことありますか?この言葉を聞いて、どう思うでしょうか。私は非常に納得がいかない。

何が納得がいかないか。他の部門から「人事はサービス部門だろ」と言われることではありません。人事に所属する人自身が、「私たちはサービス部門」と言うのに違和感があるのです。特に現職で人事をしている中でちょくちょく耳にします。

この言葉を日常的に使っている人には少々お見苦しい文章になるかも。先に謝っておきます。ただ私が「嫌い」と思っているのは、この言葉の根底に流れるマインドです。言葉自体に恨みはありません。以下で詳しく書いていきます。


そもそも「サービス」とは何なのか

サービス部門云々の前に「サービス」という言葉について考えます。

私は小売業出身です。つまりサービス業です。新卒から5年半、サービスを仕事にしてきました。サービスという言葉は意味が広く、いろいろ解釈できます。この記事書くにあたって調べてもみましたが、やっぱりいろいろあります。

その中で私の解釈は特にひねりもないですが、

「顧客に対して提供する価値で、無形のもの」です。

これを前提にしてここから書いていきます。重要なのは、「顧客に対しての価値提供」であるということです。

顧客のいないサービスはありません。人事にとっての「顧客」は誰でしょうか。いろいろ考え方はありますね。けれど、人事の仕事はやはり自社の社員に対するものが多いはず。なので、人事にとっての顧客=自社の社員であると考えられます。ただ、それはやはり会社を、事業を伸ばすための行為と考えれば、会社が顧客ともいえるかもしれませんね。

そして次に価値提供。ここがポイントです。

顧客に対しての価値が何なのか。それを突き詰めなければなりません。これは非常に難しい。そもそも顧客本人も分かっていない場合も多いです。けれどここを突き詰めないと、独りよがりのサービスになります。

唐突ですが、スーパーの売り場に並ぶリンゴで考えてみます。

このリンゴの値段は1個100円としましょう。広々としたショーケースに店員さんがリンゴを100個陳列します。店員さんはお客様が手に取りやすいように、見栄えがいいように、奇麗に丁寧に1個ずつ並べます。途中できれいに積み上げたリンゴが崩れてしまって、ちょっとやり直したりするかもしれません。

その結果、リンゴ100個を1時間かけて陳列しました。確かに見栄えは美しい。お客様も手に取りやすそうだ。ところで、この店員さんは時給1,000円のパートタイマー。1時間で100個並べたので、単純に1個当たり10円の人件費がかかります。それによってリンゴの値段は1個110円になりました。

箱ごとドンドンと積み上げれば、5分で終わった作業かもしれません。そうすれば、リンゴの値段は100円のままだったかもしれません。

どちらが顧客に真の価値を提供していると言えるでしょうか。あくまで私が顧客ならですが、陳列が奇麗でなくても、安い方がいいです。陳列で味が変わるわけでもありません。

なんか脱線した気もしますが、言いたかったのはこのふたつ。

「顧客の本当の価値は何か」はよく考えないといけないということ。そして、サービスにはコストがかかるということです。



「人事はサービス部門」に垣間見えるもの

人事の顧客=自社の社員、もしくは会社そのものと捉えるならば、本当の価値提供とは何でしょうか。

社員であれば、仕事の中で物心両面の幸福を満たすこと。会社であれば、事業成長に貢献すること。とかですかね。まぁこの記事で言いたいのはそのことではないです。

私が言いたいのは「サービス部門」という言葉に甘えて、「社員のために何かをすればそれはすべて価値がある」かのように考えるのはおかしいということ。

それはまさに、リンゴをきれいに並べて満足している店員さんのよう。陳列が大事でないとは言わない。だけど、リンゴ買う時に陳列気にする人がどれくらいいるだろう。たしかに、ちょっと気持ちはいいかもしれない。だけど、それでリンゴの値段が高くなったら、どうなんだろう。

人事はボランティアでやってるわけではないですよね。給与をもらっているはずです。もらってない人がいたらすみません。給与をもらっている以上は、私たち人事の行動も会社にとってはコストなのです。私たちが使うコストも、業績という形で会社や社員(顧客)に影響を与えるのです。

そのコストに見合うパフォーマンスを出さなくてはなりません。パフォーマンスを金額で表すことは難しい場合もあるかも。けれど、それは顧客にとって本当の価値なのか?を問い続けることはできるはずです。

この記事は完全に勢いで書きました。たまに自社の中で聞く「人事はサービス部門」という言葉への負の感情を言語化したかったから。言葉自体が嫌いなのではないです。サービス部門でもいいのです。ただその根底に垣間見える、価値提供の追及を放棄したスタンスが嫌い。

「サービス」はそんな軽い言葉じゃないと思うのです。サービスするからには、コストに見合う、本物のサービスを。その精神と共にサービス部門であり続けたいですね。

おわり

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