本日は留学生採用に関する記事を書きます。
実は弊社でも留学生採用は細々とですが行っています。
私は採用担当として、普段留学生と話す機会も多いし、いろいろと企画したりすることもあるのですが、本当に留学生採用というのは難しいなと感じます。
もちろん留学生の方たちが悪いというわけではありません。
かといって会社側が悪いかというとそういうことでもないとは思うのですが、とにかくミスマッチが発生しやすいです。弊社も苦い経験もしてきています。
どうやったら留学生を採用し、自社に定着してもらうことができるのか?これは最近考え始めたところなので、採用後の定着、活躍について続編も書く予定です。
日本企業の留学生採用の現状
現在日本には約30万人の留学生が在留しています。学部生もいれば院生もいるし、専門学校などもいるので単純計算はなかなか難しいですが、1年で約5~6万人が卒業して社会に飛び出します。
しかし、社会に飛び出すと言っても日本で就職するのは全体の約3割と言われています。残りの7割は母国に帰ったり、他の国で就職したりするわけですね。
日本で就職するのは全体の3割ですが、「日本での就職を希望する」留学生は全体の6割以上だそうです。
つまり日本で就職を希望する留学生のうちの半分程度しか、実際に日本で就職することができないということです。なぜこのような状況が起こってしまうのでしょうか。
企業と学生の間にそびえたつ日本語の壁
日本では留学生の採用に積極的な企業の方が少数です。一番の理由はやはり「日本語」に尽きます。
日本語は世界の言語の中でも難しい部類に入ります。優秀な留学生といえども、学生生活の4年や6年で日本人と完全に同等のレベルにはなれません。
漢字の読み書き、細かい言い回しの違い、日本人でさえ難易度が高いのですから、留学生にとっても難しいのは当たり前ですね。
では、企業の側の立場から見てみましょう。仕事は常に日本語で行われます。社内公用語が英語の会社もあるかもしれませんが、ごく少数ですよね。
お客さんから、社内の人から来たメールには漢字がたくさん使われています。
留学生は必死の思いで読み、理解し返信します。
返信するのも当然日本語ですが、日本語で副詞などまで正しく使った文章を書くのは難しく、時間がかかります。
しかも日本のビジネスマンは誤字脱字に厳しいです。
「意味が伝わればいいや」と考える人は少数派です。相手の名前の漢字を間違えようものなら、丁寧な謝罪メールまで入れないと許してもらえません。
会話でも少しでもたどたどしいところがあると、マイナスイメージを最初に持たれてしまいます。
このような仕事環境なのですから、「留学生よりも日本人の方がいい」と多くの企業が思うのもうなずけてしまいます。
日本の採用手法は留学生には難しい
日本の「就活」は今大きな転換期を迎えていますが独特です。特に留学生が口をそろえて「苦手だ」というのがエントリーシート(ES)です。
昨今はいろいろな書籍などでES不要論を目にすることも多くなり、実際にそうしている企業も増えてきています。とはいえまだESを課している企業も多いです。
自分の強みや志望動機を正しい日本語で書くのもなかなか大変なのに、しかもそれを相手に響くように書くとなると相当な難易度でしょう。手書きなんて論外です。
ポテンシャルの高い留学生でも、それを日本語で表現できないがゆえに見落とされてしまうということは往々にしてありがちです。
また、新卒採用ではSPIのような適性検査を受けさせる企業も多いですが、これも留学生には厳しいです。
学力的な部分に関しては低めの点数が出ることも多いです。
彼らが知的能力で劣るかということではなく、日本語で漢字で書かれた適性検査の問題に処理スピードが追い付かないだけなのです。
このように日本企業が新卒採用において選考に使用するツールは、留学生にとってはなかなか厳しいものなのです。
なので、留学生を採用したいという希望がある企業はESやSPIを選考の基準とするのは再考の必要があります。単純に日本人学生の基準にそれらを当てはめて考えると、留学生はほとんど面接にも至らないでしょう。
留学生採用には面接重視の採用フローの構築は必須であると考えます。
そもそも、ESや学力試験で本当に自社が必要とする人材を選抜できているのか?という部分についても、再検討する余地は大きくあるのではないでしょうか。
何のために留学生を採用するのか?
では、留学生を採用している企業は何のために採用しているのか?
私が他の企業の人事担当者と情報交換したりしている限り、概ね以下の3点に集約されるように感じます。
①優秀であれば国籍は関係ない
これは外資系や売上高が兆を超えるような超大企業が多いイメージです。そういう企業は社内に英語ができる人がたくさんいるし、なんなら社内公用語が英語の場合も多々あります。
②日本的な企業風土を変えてほしい
これもちょくちょく聞くのですが、正直留学生にその役割を求めるのはちょっと酷な気もしています。TOPがすべき役割を転嫁しているような気もしてなりません。
③グローバルに仕事をしてくれる人材がほしい
これは「海外に拠点はあるもののグローバルに活躍できる人材が多くない」くらいの規模の企業が多い気がします。弊社もここです(笑)
ただ、これに関しては根本的にグローバル人材を育てるような風土が自社にあるのかを考え直した方がいいように思います。
私もこの方向で弊社の中で必死に足掻いています。それが無いと折角留学生を採用しても宝の持ち腐れですよね。
各業界で日本の市場が頭打ちになりつつある昨今、ビジネスの範囲を海外に広げていく動きはもはや珍しくもありません。
そんな中で留学生の力をフルに活かせる企業が一歩先んじる可能性は高いです。
留学生の採用活動
ご参考になるかはわかりませんが、弊社で留学生の採用のために行っている活動の一部をご紹介します。
①とにかくこちらからアプローチ!
これはもう基本中の基本です。
留学生は、会社に対してどうアプローチを取っていいかわかりません。
日本の就活生の多くが暗黙で分かるようなことも分からなかったりするのです。
私は、とにかく名前と連絡先が分かった留学生にはこちらからメールします。
その時は
・難しい漢字や、回りくどい表現は使わない
・まずは電話やSkypeなどでの面談を提案してみる(体感ですが留学生が親しんでいるツールはSkypeが多いです)
の二点に注意します。
まずは自社に留学生を採用する意思があること、貴方に興味があることを率直に伝えます。
②キャリアパスを具体的に、詳細に
ここで興味を持ってくれていれば、対面や電話でコミュニケーションをとっていきます。
結構よく言われることですが、留学生採用ではキャリアパスのビジョンをしっかりすり合わせることが非常に重要です。
そもそも、日本のメンバーシップ型の雇用慣行にどっぷり染まっている会社は、新卒で入ってくる時点で明確なキャリアプランはほとんど描けていないのが実態です。
最近では「配属ガチャ」なんて言葉も出てきて、その状況に少しずつ疑問が呈されているのは良いことだと思います。
ただ、日本のメンバーシップ型の雇用をよく知らない留学生には、特に将来のキャリアプランをよく伝える必要があります。
私は、留学生相手にはキャリアプランシートという各部署でのざっくりとした育成計画(1~3・5・7・10年目)を見せながら話をしています。
つまり、その時期にどんな部署で、どんな経験を積んで、どんなスキルを身につけてほしいか。海外での勤務の予定なども書きます。
ただ、これはあくまでプランで、必ずしもその通りとは限らないのであくまで映像で見せるだけで、ドキュメントは渡しません。
入社してから、毎年の面談を経てプランは少しずつ微修正していきます。
それはあらかじめ本人にも伝えておきます。
もちろん、相手の希望もよくヒアリングする必要があります。
例えば、何年か働いてキャリアを積んだら母国に戻りたいと思っている人、日本の永住資格を取得したいと思っている人などなど様々です。
ここで相手の希望をちゃんと確認していないと、入社後に思わぬミスマッチを起こすので気を付けましょう。
これは結構、相手にもインパクトを残せることが多いですね。事前に部署とのすり合わせは必要ですが。
③外国籍の社員と引き合わせる
実際に既に働いている外国籍の社員がいる場合は、その人と引き合わせます。
外国籍社員には、特にこちらから注文は付けません。
「自由に、正直に話してくれていいよ」と言っています。
日本人も同じではありますが、悪いところも明確に伝えておかないと、入社後のミスマッチ→退職という決断は、留学生は日本人よりも早いので、スタート時点での細かい認識合わせは必須です。
やはり日本人から見た会社像と外国籍の方から見た会社像は違いますから。
④選考プロセスは原則日本語
弊社は社内公用語が英語というわけでもなく、基本的には仕事は日本語がほとんどです。
なので、ある程度の日本語能力はないと、いくら他に優れた能力があっても業務遂行は困難です。
面接も当然日本語で行いますし、応募書類も日本語で書いてもらいます。
ここで変に英語で対応するのは、入社後が英語環境でもない限りは逆に良くないと私は考えます。
⑤挨拶だけは母国の言葉で
すごい細かいTipsですが、私は挨拶だけは留学生の母国の言葉でするようにしています。
「貴方の母国に敬意を払います」という意思表明と、アイスブレイクを兼ねています。
別に、無くても大差ないとは思いますが、私としては大事にしていることのひとつです。
⑥意外と効く「友達紹介して?」
さすがに面接の結果が思わしくなかった方にはできませんが、内定を出した方には結構私はお願いしてみるようにしています。
彼ら彼女らはやはり留学生の中でのネットワークを持っており、そこの中で就活の情報をやり取りしています。
そこまでのアプローチの中で悪い印象を与えていなければ、結構紹介してくれます。
ダメもとで、お願いしてみる価値はあります。
もちろん、広義ではリファラルになるので、選考に際して紹介者へのケアは必須です。
留学生採用は怖くない!
留学生への採用活動について書いてきました。
日本の学生を採用するときと留学生を採用するときでは、採用担当も考え方をシフトする必要があります。
日本に生まれ、日本に育ち、日本の文化の中で生きてきた学生の当たり前は、留学生にとっては当たり前でも何でもありません。
「日本独自の当たり前」にどうしてもこだわりたいなら、留学生を採用するのは難しいし、そもそも採用すべきでないというのが私の考えです。
ただ、その「日本独自の当たり前」にこだわる企業は、テクノロジーの進歩によってどんどんグローバル化するビジネスの世界で果たして生き残っていけるのでしょうか。
ダイバーシティという言葉はずいぶん前から使われていますが、日本ではなかなか本当のダイバーシティは根付いていません。
下町の八百屋さんとかならともかく海外にも拠点を持つような企業でも、日本の本社で働く社員は99%日本人ということが多いです。
留学生と話していると、彼らのバイタリティの高さ、ビジョンへのコミットの強さに驚かされます。確かに細かい日本語の間違いは多いです。
でも言語なんて所詮コミュニケーションツールです。
相手に伝えられるレベルならいいんです、語尾がちょっと違ったって。
そんなことよりもっと大切なものを彼らはたくさん持っています。
おわり
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