この記事では、組織運営・リーダーシップに関する理論であるコンティンジェンシー理論について、調べたことを備忘も兼ねてアウトプットしていきたいと思います。
1900年代からリーダーシップに関する研究は開始され、研究の初期段階では「リーダーシップとは生まれながらに備わった性質である」という前提を持つ「特性理論」が主流でした。
しかし1940年代になってくると、リーダーの特徴の詳細な研究には不十分になり、性質でなく「行動」に着目した行動理論が提唱されました。
しかし、行動理論もまた、1960年代になると、限界が指摘され始めています。
行動理論においては「理想のリーダー」とされる人物でも、実際にはリーダーシップを常に適切に発揮しているとは限らなかったのです。
「どのような状況下でも普遍で最適となるリーダーシップは存在しないのではないか」という疑問が生じ、「では、どのような状況下であればよいのか」を検証するために「条件適合理論」が提唱されました。
この条件適合理論の中でも基本的な理論である「コンティンジェンシー理論」について書いていきたいと思います。
コンティンジェンシー理論の概要
コンティンジェンシー理論は、1964年にF.フィドラーにより提唱されました。リーダーシップに関する理論としては古典的な部類に入るかなと思います。
リーダーシップというよりも組織経営全般に関する理論という印象です。
コンティンジェンシー理論では、あらゆる環境に対して唯一最善の組織は存在せず、環境が異なれば有効な組織の形は異なるという立場をとります。
たとえば、安定した環境下では機械的かつ官僚的な組織が有効であるが、不安定な環境下では有機的な組織が有効と考えられます。
また、リーダーシップについてもこれと同様の考え方がなされます。適切なリーダーシップ・スタイルは集団が置かれている状況によって異なるということです。
ニッコロ・マキャベリの「君主論」を元にリーダーシップについて書いた記事がこちらです↓
[blogcard url=”https://hrjob.info/the_prince_leadership_book_review/”]リーダーシップ・スタイルの決定
では、それぞれの状況に最適なリーダーシップ・スタイルとはどのようにして決定されるのでしょうか。フィドラーはリーダーシップの有効性に関わる条件を「状況好意性」という概念で定義しています。そして、状況好意性を決定するための要素として、「状況変数」という以下の3つの要素を定義しています。
① リーダーが組織の他のメンバーに受け入れられる度合
リーダーが集団メンバーに支持され、受容されているほど「状況好意性」が高い
② 仕事・課題の明確さ
タスクの目標、手順、成果が明確で、構造化されているほど「状況好意性」が高い
③ リーダーが部下をコントロールする権限の強さ
リーダーがメンバーの採用・評価・昇進などに影響力があるほど「状況好意性」が高い
また、フィドラーはLPC(Less Preferred Coworker)という指数も定義しました。
LPCとは、リーダーの最も苦手な同僚(部下)に対する対応を計測するものです。そして、苦手な同僚を好意的に評価するリーダーに関しては「高い」LPCスコア、苦手な同僚を避けようとするリーダーは「低い」LPCスコアが付きます。
これだけ読むと、LPCが高い方が良いような気がしますよね。私も最初はそう思いました。しかし、フィドラーの理論では一概にそうとも言えないようです。
フィドラーはリーダーシップ・スタイルをLPCによって「タスク中心・指示的なスタイル(低LPC)」と「人間関係中心・非指示的なスタイル(高LPC)」に分けています。
つまり、嫌いということは何かしらの理由はあるのでしょうから、それでも高い評価を付けるということは、その相手との人間関係も壊したくないという思いの表れということでしょうか。
逆もまた然り。そして、状況好意性の度合いによってどちらのリーダーシップ・スタイルが有効かが決まってきます。
リーダーにとって周囲の状況が
非常に好意的/非常に非好意的 → タスク志向型
好意的でも非好意的でもない → 人間関係志向型
このように場合分けされるのだそうです。
つまり、自組織の状況好意性の状態がどのようであるかを適切に把握し、それに適したリーダーシップを発揮することが必要であるということですね。
コンティンジェンシー理論を組織の運営にどう活かす?
では、この理論を実務のうえでどのように活かしていけそうでしょうか。まずは、先ほども書きましたが自身の組織の状況好意性がどのようかを見極めてみると良いようです。
状況好意性を明確に数値化する方法論までは調べられなかったのですが、例えば5段階評価で付けてみるとかして大枠をつかむことはできるでしょう。
あとは、自身のLPCについて検討します。これも明確な数値の出し方を申し上げられませんが、LPCが高いか低いかの回答は自分でも比較的容易に導けるのではないでしょうか。
そこまでわかったら、自分の今のリーダーシップ・スタイルが組織の状況好意性にマッチしているかを検討してみるとよいでしょう。もし、マッチしていないようであれば、いきなりガラリと変えるのは難しいところもあるものの、少しずつ環境にアジャストしていくのも大切かもしれませんね。
まとめ
コンテンジェンシー理論は、どんな状況下でも通用する普遍のリーダーシップは存在しないという前提に基づいています。
リーダーとして経験を積めば積むほど、「自分のやり方」に自信がついて、周りが見えなくなることがありますが、組織の状況好意性を的確に把握しながら自身のリーダーシップ・スタイルを見直すということも大事ですね。
かなり古い理論ではあるので、一説には「既に死んでいる理論」なんて言われたりもするようですが、私自身にとっては自分の中のリーダーのあり方を見つめなおすのに非常に参考になる理論でした。
リーダーシップについて私の考え方をまとめた記事がこちらです↓よかったら読んでみてください。
[blogcard url=”https://hrjob.info/leadership_new_type/”]おわり
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