この記事では、「なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか」という書籍について、私が読んで感じたこと等を書いていきます。
本の中身は、トヨタの考え方を表す標語がそのままチャプターになっており、その中に具体例を交えて解説が書いてあります。
トヨタ自動車は昨年ついに売上高は30兆円を超え、まさに日本を代表する企業です。
↓昨年の決算発表の時に書いた記事です↓
[blogcard url=”https://hrjob.info/toyota_2019_settlement/”]そんなトヨタ自動車、人材育成にも非常に力を入れており、独自の考え方を元に世界で勝ち抜く社員を育てています。
トヨタの考え方は泥臭い部分も多く、昨今の若い人には若干受けが悪いかもしれませんが、やはり基本中の基本であると私は思いますし、この本も共感する部分が多かったです。
中でも私が印象に残った点、自分の考え方に近い点を以下に列挙しながら詳細を書いていきます。
今を疑うことは未来を信じること
現状を否定、特に自分自身を否定するということはとても難しいことです。
ですが、何事も「今がピークだ」と思った瞬間に、それ以上の改善ができなくなってしまいます。
成功した時こそ、兜の緒を締める必要があります。
本の中にも、生産改革に取り組んできて、目標の数字を達成して喜ぶA社の社長さんに、改革の手伝いをしてきたトヨタマンBさんが「まだまだこれから」といって驚かせるシーンが書かれています。
これは本当に重要な考え方で、特に採用なんかは今年うまくいったからといって同じアプローチで来年もうまくいくとはかぎりません。
外部環境は絶えず変化しているからです。今年の応募者と来年の応募者は考えていることが違います。
何より、「うまくいった」という自分の慢心が最大の敵です。
慢心は改善に向かう心を薄れさせます。
常に「もっとうまくいく方法はないか」「もっと良い結果を出せないか」と模索し続け、現状を否定し続けることは、改善に非常に重要なマインドです。
方向を教えて方法を考えさせる
進むべき方向は、会社として部署として統一せねばなりません。
それが無く各人が自由にやっていたら、それはもはや組織ではなくただの個人の集合体です。
ただ、その進むべき方向を定めたら、そこに到達する方法は社員それぞれに考えさせるのがトヨタ流です。
トヨタの上司は簡単には答えを教えません。
魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える。というのはよく聞く言葉ですが、トヨタ風に言えば魚の釣り方を自分で考えさせる。という感じでしょうか。
ここでの重要なポイントは、ただ丸投げするだけではないということです。
上司は自分の中でしっかりとした答えを持っている必要がありますし、上司も一緒になって考えるのです。
決して放置ではなく、常に傍に居る。それもトヨタの上司の責務として捉えられています。
そういう上司が本気で人材育成に取り組むスタンスと、それが当たり前のことである社風こそが、トヨタの人材育成の基盤であると私は考えています。
「前は成功した」を根拠にするな
「アンラーニング」という言葉があります。
「アンラーニング」(unlearning)とは、いったん学んだ知識や既存の価値観を批判的思考によって意識的に棄て去り、新たに学び直すこと。日本語では「学習棄却」「学びほぐし」などと訳されます。個人や組織が激しい環境変化に適応して、継続的な成長を遂げるためには、いわゆる学習(ラーニング)と学習棄却(アンラーニング)という、2種類の一見相反する学びのプロセスのサイクルをたえず回していくことが不可欠とされます。
仕事をしていくと、知らず知らずのうちに知識や成功体験が自分の中に蓄積されます。
それはそれで重要なことではあるのですが、それに固執してしまうと先に触れた「今を疑うこと」ができなくなります。
「去年はこれでうまくいったから」「前からずっとこうやってるから」
こういう言葉は思考を停止させます。
「自分たちはこの分野の専門家だから、何でも分かっている」
こういう態度は、刻一刻と変わる現状にキャッチアップする努力を放棄させます。
まさにこの言葉は、アンラーニングの重要性を説いたものだと感じます。
謙虚さを忘れては、成長はありませんね。
[blogcard url=”https://hrjob.info/reading_books_the_fearless_organization/”]まとめ
トヨタ自動車は売上や利益ももちろんすごいですが、この徹底した企業文化が最もすごいのだと感じます。
モノをつくるためには人をつくる必要がある。そして、人の成長こそが会社の成長であるとして人を育て続けているからこそ、これだけの企業に成長したのでしょう。
この本は割とソフトの部分の内容だったので、もう少し制度などのハード的な部分に踏み込んでくれるともっと面白いなと思いました。
繰り返しますが、トヨタの考え方は決して斬新なものではありません。
読めば皆、「そんなことは分かってる」と思うようなことばかりです。
けれど、そんなことを全従業員の行動レベルに落とし込むのが、どれだけ難しいことか。
人事に携わる方ならお分かりだと思います。
私もたまにトヨタの方とお話しすることもありますが、あの規模でそれができているからこその今があるのだと感じますね。
人づくりと並んでトヨタが大事にする考え方として、社会的責任を果たすということがあります。
最後に書いてあった言葉をそのまま引用しますと
企業も人も社会的存在である以上、守るべきものがある。そうした責任をきちんと果たした企業や人だけが本当の価値を持ち、尊敬される存在であることができる。
特に今新型コロナウイルスで、世界中の企業の経営状態が悪化する中で、とても重く響く言葉ですね。
決して奇をてらったことではなく、原理原則となる考え方を忠実に極めてきたからこその今のトヨタなのだと改めて感じました。
おわり
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