【人事の読書記録】「ザ・会社改造」三枝匡

この本はおススメしていただいて読みました。

著者の三枝さんで言えば「V字回復の経営」も有名ですね。本書はそれとは少し違ったテイストになってはいるのですが、組織改革について三枝さんの実践的なノウハウや考え方は「V字~」と同様に非常に参考になります。

複雑な理論ではなく、シンプルかつ現場に根付いたものが中心なので、普段の仕事にも生かしやすそうです。

著者の三枝さんが株式会社ミスミの社長になり、会社を改造していく実話です。

このブログは一応人事関連がテーマなので、本書の中からは組織に関連する部分と、あとは個人的に最近リーダーシップに関する本をよく読んでいるので、三枝さんの経営者としてのリーダーシップにも着目しながらまとめてみようと思います。

ミスミの組織論

三枝さんの組織論の中でも私が重要だと思った考え方は、スモール・イズ・ビューティフルです。

簡単に言えば、肥大化した機能別組織から社員を開放することによって、ムダな社内調整にエネルギーを使わず、会社の発展にエネルギーを向けられるようにしていくことです。

ミスミは「チーム制」と呼ばれる組織形態を三枝さんの就任以前からとっており、それを三枝さんの元でさらに進展させていきます。

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本書には詳しく内容の説明が書いてあります。前記事↑と若干内容はかぶりますが、このスモール・イズ・ビューティフルを実現するために重要なのは以下の2点と考えます。

①組織の分散(脱・中央集権)

②権限移譲

「そんなことはわかってる。それができたら苦労はしない」という声が聞こえてきそうです。例えば弊社も日本によくあるヒエラルキー型の組織構造をしており、その中で①②のような状態を目指すのは相当に難易度が高いと言わざるを得ません。

私はこういう話になるとすぐアメーバ経営に絡めたくなってしまいますがそれは置いておきます。先日ある方からも示唆をいただきましたが第一歩はまずは組織の各階層の権限と責任を明確にすることなのかなと。

弊社も調べてみたら組織管理規定とかあるものの、完全にホコリをかぶってる感じでした苦笑。権限委譲と言ってもそもそも明確な権限が分からなければ、ただの丸投げと同じなのかなと思っています。

また、この権限移譲(エンパワーメント)には、権限を適切に執行できるようにする教育指導も含まれますので、そのためにもやはりまずは権限と責任の明確化が重要と考えるのは妥当に思えます。

さらに、三枝さんが大事にしていた施策として「ビジネスプラン・システム」があると思いました。これは自分たちの事業戦略・計画を自分たちで作成し、プレゼンで承認を勝ち取っていくシステムのこと。

もう我慢できずにアメーバ経営の話を出してしまいますが、アメーバ経営でもやはりこれに似た仕組みがあり、自組織の目標や達成のための計画は自分たちで作成します。計画はともかく、目標はトップダウンという会社が多いかと。ですが、やはり自分たちで立てた目標・計画を自分たちで遂行するということは、モチベーションの観点や人材育成の観点から見ても非常に意味のあることだと思います

そう考えるとつくづくアメーバ経営ってよくできてんなと・・・。まずアメーバ経営を紹介する記事書けって感じですね。今度書きます。

三枝さんのリーダーシップ

次に三枝さんのリーダーシップの中で特徴的だなと感じる点をいくつかピックアップしてみます。

答えは与えず背中を見せる

本書の中でも随所に出てきますが、部下のプロジェクトが難航していると三枝さんはスッと現場に入ってきます。そして、ある程度のところまで自身で模範を見せる。けど最後までやるわけではありません。部下が概ねゴールへの道筋が描けたかなというタイミングでスッと退くのです。

これはなかなか難しいことだなと。どうしても最後まで見てやりたくなってしまう人情もありますし、適切なところで介入するタイミングも、普段からしっかり見ていないと見落としてしまいそうです。

この「付かず離れずの距離感」はリーダーシップのとり方として非常に重要だなと感じます。意識しないとなかなか難しそうなので、自分も実践を通して身につけていきたいですね。

乱暴な人事

本書の中ではちょくちょく、抜擢人事が見られます。比較的年齢も若く、経験も少ない人に海外ビジネスの立ち上げを任せているシーンなど。

さて、抜擢人事というと聞こえは良いですが、当然それ相応のリスクも付きまといます。読み取れる大事なポイントは以下2点。

①適切なストレッチ度合い

ストレッチ度合いが強すぎれば、そもそも難題に立ち向かうことすらできず、本人の心を折ってしまうだけになる可能性が非常に高いです。また、ミッションの失敗の可能性もグンと上がります。

②徹底的に守る

思い切った人事をしたら、それを受けた本人はしっかりと守ってやることが大事です。梯子を外すような真似はいけませんね。社内からの嫉妬も受けることが予想されます。そういった逆風を乗り越えて本人が成長していってもらうためにも、任命したからには厳しい言葉は掛けても最後には必ず味方になってやる姿勢は大事だなと感じました。

まとめ

他にも、強烈な反省論→改革シナリオ・戦略→アクションプランで構成される「3枚セットのシナリオ」もシンプルで現場に役立つフレームワークだなと感じましたね。

三枝さんの現場にこだわる姿勢は本書から多く読み取れましたので、やはり紹介される考え方も実践的に洗練されたものだなという印象でした。

いわゆる「人事」とはちょっと毛色が違うかもしれませんが、昨今の人事にはこういった組織戦略的な視点がかなり求められていると感じます。そういう意味でも、三枝さんらしく非常に読みやすくて生々しいこの本はとても参考になる部分が多かったです。

アメーバ経営の記事は・・・今度書きますね。

おわり

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