【人事の読書記録】「あなたにありがとう。」松浦弥太郎

とても久しぶりの読書記録です。 雑誌「暮しの手帖」の編集長である著者。

正直にいうとこの雑誌は、存在は知っていたものの読んだことはありませんでした。

ですがこの本を読むと、なんとなく雑誌の雰囲気も想像できるような、あたたかく、やさしい気持ちにしてくれる本です。

”人との心地よい付き合い方”が書かれています。 自分自身の、他者との接し方を振り返るよい機会になりました。とりとめなくですが、印象に残ったり考えたことをいくつか。

相手を待たない、待たせない

本書の中では 「待たない」というのは、「相手が心を開くのを待つのではなく、自分から心の窓を開くこと」 「待たせない」というのは「相手と常に情報を共有し、状況が分からず宙ぶらりんのままで放置しない」 意味は違いますが、どちらも共通しているのは「関係性を築く主体はあくまで自分である」という考え方です。本書の中に書かれている多くの心がけに通底する考え方のように思いました。

自分が心を閉じたままで、相手が開いてくれるのを待つ。これはとても他力本願で、相手に依存した考え方なのだと思います。まずは自分が自己開示すること。 そして、「あなたに会えてうれしい」という気持ちを自分から前面に出すこと。大事なことですね。「会えてうれしい」と言われて気分が悪い人はいないはず。 とくに初対面の人と会うことが増えた最近の自分の状況を振り返って、まさにこれができるか否かは大きいなと感じています。

自分がきちんと心を開けているときは、相手の方も開いてくれる。そしてその後もよい関係を保てています。いまいちそうならないケースは、自分が心をきちんと開けていないとき。まさに、相手は自分を映す鏡のようなものだなと。 未熟な私は誰に対してでもいきなり心を開けませんが、それができる範囲を少しずつ広げていければきっとより豊かな人間関係が待っているのでしょう。

そうして相手が心を開いてくれたら、こまめに連絡をとり、相手を不安にさせないこと。これが「待たせない」ということですね。「筆まめになる」という言葉も本書の中に登場しますが、メール1通、電話1本を億劫だと思わずにコミュニケーションをとること。

私が尊敬する前職の社長は、退職した今でも私の誕生日や、年始などの節目に連絡をくださいます。だから、縁が切れません。本当に感謝しかないです。そんなことができる人に、自分もなりたいと思いますね。

決めつけない

私が「苦手だな」と感じる人の特徴のひとつ。

「○○さんって××な人だよね」という話を頻繁にする人。とくに××にはマイナスイメージの言葉が入ります。 もちろん、そんな人ともいつか良い関係を築けたらと思いますが、どうしてもそういう人とは一歩引いて付き合ってしまいます。 「他人を目に見える一側面だけでカテゴライズする」というのはなんとも罪深い行いに感じます。 私はそういうことを思っても言わないようにするし、極力思わないようにもしようと心がけています。

「○○さんは××な人」というイメージを持ってしまったら、「なぜそう思うのか」をきちんと考えること。そうすると、たいていそれは自分の偏った見方からくるものだと思っています。

人の「新しい、いいところ」をみつける

これは、ほんとに難しいなと普段から感じています。けど、できるようになりたい。 とくに何が難しいかというと、いいところを見つけるのはまだしも、その伝え方が難しいなというのをいつも感じます。

本人にそれを伝えたい。「私はあなたのこんないいところも知っていますよ」と。けれど、わざとらしくなってしまっては意味が無いし、さりげなさ過ぎても伝わらない。

やはりダイレクトに言葉に出して言うのですが、どんな言葉で伝えようか。言葉選びに迷います。相手のいいところを伝える、褒める言葉のバリエーションをもっと増やしていきたいと感じました。

見返りを求めない

これは普段から意識していることで、自分の想いが言語化されているような心地でした。

「相手のために何かする」それ自体はすばらしいことです。「利他の精神」という言葉も私はとても大事にしています。 ただそれはあくまで、「自分がそうしたいからそうする」だけのこと。ここでも「関係性の構築の主体は自分」なのだと思います。 相手から求められている、という意識自体がそもそも勘違いかもしれません。

また、何かしたとしても思ったような反応が返ってこないかもしれません。そんな時に失望したり、間違っても相手を責めたりしないように。 もちろん、相手が喜んでくれたらうれしい気持ちになります。

ですが、それを期待して行動を起こすのはやはり違っていて、「自分がこうしたい」という思いが源泉にあるのです。 ある意味究極の自己満足ですが、私はそれでいいと思っていますし、これからもそういう考え方を貫きたいと思っています。

相手につられない

私にも苦手な人はいます。誰に対してもフラットに接することを心がけてはいるのですが、やはり「好き嫌い」というのを消し去ることはできません。 ただ、苦手な人、感じの悪い人と接する時も、自分らしいふるまいは崩さないようにしたいなと。

私は普段、相手が敵意をもって接してくるときほど、自分は無理にでも笑顔を意識して作るようにしています。笑顔は自分の心もおだやかに保ってくれるし、相手の毒気も少しは抜けます。

言葉遣いや振る舞いも、相手に合わせるのではなく自分のペースで。これも最初に書いた「関係性を築く主体はあくまで自分である」という心がけの一環だと思います。 「きっと相手にも何かの理由がある」 そう思い、相手の感じの悪さの背景に想いをめぐらせながら、自分のペースを貫く。

好き嫌いを消し去ることはできなくとも、苦手な人に対してもそういう接し方を続けられる自分でありたいです。

呼吸するように「ありがとう」を言う

本書のタイトルでもありますが、「ありがとう」という言葉はほんとにすばらしい。

どんなことでも、「自分から」ありがとうを言うこと。何度も何度も。これも、相手を待つのではなく自分から。たいしたことではなく、日常のささいなことでも。 これはずっと前から私は意識し続けてきて、今では多分一日に50回は「ありがとう」を言っています(数えたことはないですが…)

とにかくまずは口に出すこと。人間の心持ちが変わる時というのは、たいてい行動が変わって、それを繰り返して習慣になっていくうちに、初めて自分の内面がそれについてくるのだと思います。

最初は少し無理やりだったりしましたが、「ありがとう」を頻繁に口に出すようになってから実際に感謝の気持ちを安定して持てるようになったと感じています。 これからも、ずっとずっと大事にしていきたい習慣。あらためて認識させてくれたこの本に、そしてこの本に出逢わせてくださった方にも「ありがとう」と言いたいです。 とても、あたたかい気持ちにさせてくれる、よい本でした。  

 

おわり

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