【5分で読める労働判例】テックジャパン事件~固定残業代~

テックジャパン事件の概要

派遣会社であるY社と派遣労働者であるXとの間には、基本給を月額41万円とする労働契約がなされていた。

また、固定残業代についても以下の通り定められていた。

月間総労働時間が180時間を超えた場合には超えた時間について1時間あたり2,560円を支払う

②月間総労働時間が140時間に満たない場合は満たない時間について1時間あたり2,920円を控除する

仮に月間の稼働日数が20日の場合は、法定労働時間の合計は8時間×20日の160時間であり、これを超えている場合は当然、残業代の支払いが必要である(厳密には1日あたり8時間超など、もう少し細かい計算)

しかし、本件の場合は月間総労働時間が180時間以内だった場合は残業代が支払われない、いわゆる固定残業代という契約である。

XはY社に対し約1年5ヶ月分の期間における残業代等の支払いを求めて訴えを起こした。

最高裁まで争った結果、Xが勝訴し、Y社は未払い分の支払いを命じられることとなった。

テックジャパン事件のポイント

本件においては月額41万円の全体が基本給とされている。またその一部が他の部分と区別されて、時間外の割増賃金とされていない。つまり月額41万円の基本給について通常の労働時間の賃金にあたる部分と、時間外の割増賃金にあたる部分を判別する事はできないものと言える。

労働基準法においては実際の労働時間数に応じて賃金を支払うことが大前提である。定額残業代は本来この原則にマッチしない。そのため、一定の要件を満たさなくては定額残業代制度を用いることは許容されない。その要件は以下のふたつ。

要件①基本給等の中に残業代が含まれていることが明示されていること

・・・労使の合意または就業規則上の明記及び周知が求められる。

要件②通常の労働時間に相当する部分と残業代に相当する部分が判別できること

・・・定額残業代といっても実際の残業時間に応じて、定額部分を超える差額は別途支給する必要がある。そのためこの判別ができないと差額支給の要否が確定できなくなってしまう。

固定残業代を賃金に含める場合には

  1. 固定残業代を除いた基本給の額
  2. 固定残業代の対象となる時間数と金額の計算方法
  3. 固定残業代を超える部分については、別途割増賃金を支払う旨

をきちんと明示する必要がある。

本件においてY社が明示している労働条件には、要件②が欠けていることは明白である。

おわり

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です