【5分で読める労働判例】大阪医科薬科大学事件~非正規従業員への賞与不支給~

大阪医科薬科大学事件の概要

X(原告)はY大学(被告)のアルバイト職員として平成25年から平成28年まで約3年間、有期労働契約を更新して勤務した。また、最後の1年間は適応障害と診断されて大部分が欠勤扱いとされている。 Xは正職員に支給されている賞与が自身には支給されないことと、欠勤中の賃金に正職員との間で相違があったことは労働契約法20条に違反するとして、その相違分の損害賠償を求めた。 大阪高裁では、賞与については正職員の60%程度の支給をすべき、欠勤中の賃金についても正職員には生活保障の意味合いで支給しているのにアルバイト職員に不支給は不合理としていた。 しかしながら、最高裁判所はいずれの判断についても否定し、どちらも支給しなかったことが不合理ではないとした。

大阪医科薬科大学事件のポイント

今回問題になっている労働契約法20条は現在はパートタイム・有期雇用労働法の8・9条に統合されている。 内容としては、同一労働同一賃金における「均衡待遇」すなわち短時間・有期雇用労働者であることを理由として、待遇に不合理な格差をつけてはならないというもの。 均衡待遇における不合理か否かは次の観点から総合的に判断するものである。
  1. 職務の内容
  2. 職務の内容および配置の変更の範囲
  3. その他の事情
※「職務の内容」とは「業務の内容とその業務に伴う責任の程度」とされている また、各論点(今回で言えば賞与や欠勤中の賃金)については、その制度の趣旨や目的も勘案される。 それを踏まえて、最高裁の判断のポイントは以下の通り。

賞与について

①Y大学の賞与は業績に連動するものではなく、基本給のみに連動しており、あくまで労務の対価としての性質が強いものであった ②基本給は勤務成績や勤続年数が影響する職能給の性格があった ③正職員の方が業務の難度や責任の程度が高く、人材育成や活用を目的とした人事異動が行われていた このようなことから、Y大学は正職員としての難度の高い職務を遂行する人材の確保を主目的に賞与を支給していたといえる。 また、Y大学はアルバイト職員から契約職員、正職員に登用するための試験を実施する制度を設けていたことを「その他の事情」として勘案している。 以上の内容を踏まえて、最高裁は賞与の不支給に関しては不合理ではないという結論であった。

欠勤中の賃金について

賞与と同様に、難度や責任の高い業務をこなしてもらうための育成の意味も込めた正職員の長期就労を目的として定められている制度である。 こちらも賞与とほぼ同様の要因から、不支給の取り扱いは不合理でないとされている。

まとめ

今回はそもそも正職員とアルバイト職員では職務の内容などにも相違があったことは認められているが、それに加えて「その他の事情」も重要なポイントである。 正職員への登用制度が存在し、ある程度の実績もあったことが今回の判断に影響を与えており、そういった格差を解消するための努力をどれくらいできているかというところも自社で考えるべきポイントである。 とはいえ、これは個人的な意見だがまったくの不支給を是認した今回の判決は、心情的にはやや疑問が残る部分もあり、鵜呑みにしないようにはしようと思う。この判決をもって「不支給で良い」とするのではなく、判決に至る過程をしっかりと吟味する必要がある。

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