
京セラ事件の概要
Y社(被告)の従業員X(原告)は病気でB医師の診断書を以てY社を休職していた。
Xが所属する労働組合は、この病気は業務に起因するものなので職業病として取り扱い、休職期間満了による退職扱いを回避するよう会社に申し入れていた。
しかし、Y社はB医師から疾病が業務に起因しないとの回答を得た上で、Xに3名の医師を指定していずれかの診断を受けるように指示。
Xはこれに応じなかったため、Y社は休職期間満了でXを退職扱いとした。
退職について労働組合が団体交渉を申し入れたがY社は応じず。労働組合が不当労働行為として労働委員会に救済命令を求めたところ、労働委員会はこれを容認。それを不服としてY社が提訴した。

京セラ事件の判決
一審ではY社の請求は棄却されたが、二審の東京高裁では不当労働行為とは言えないとして、Y社の訴えが認められている。
判決のポイントは、今回のケースで、Y社がXに対して専門医の診断を受けるように求めることは、労使間における信義則や公平の観念に照らして合理的であるということ。
従業員であるXの疾病が業務に起因するものであるかは、当然会社として大きな関心事である。しかし、Xは就業規則等に定めがないことを主な理由に、医師の受診を拒んでいた。
Xにも医師の選択の自由があり、その部分に関しては会社と争う余地は十分にある。例えば、指定された医師の診断に不満がある場合は、自分で医師を選んで再度診断を受ける等の権利は認められる。
しかしながら、会社側の合理的な要求に対して、診断そのものを拒否する理由としては、「就業規則に定めがない」では弱かったということだ。
おわり
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