【5分で読める労働判例】国鉄鹿児島自動車営業所事件~業務命令~



国鉄鹿児島自動車営業所事件の概要

Xは国鉄九州総局鹿児島自動車営業所の運輸管理係として働いていた。また、国鉄労働組合の組合員でもあった。

当時の国鉄は職場規律の乱れが内外から指摘され、その是正が求められていた。そのため、職員に対して勤務時間中のワッペン等の着用や、国鉄労働組合のバッジの着用を禁止していた。

ある日Xが労働組合のバッジを着用したまま業務に就こうとしたため、上司はバッジの取り外しを命じたが、Xはこれに従わなかった。上司はXを通常の業務から外し、鹿児島営業所構内に降り積もった火山灰を除去する作業を命じた。

Xの作業中は上司がその様子を監視し、他の職員がXに飲み物を渡そうとしたところ上司がこれを制止する等した。

Xはこの作業を命じられたことについて、労働契約上の業務ではなく懲罰としての意味合いが強いとして精神的苦痛についての損害賠償を請求した。

結果としては火山灰除去の作業は決して過酷なものとはいえず、その命令に至った背景なども踏まえると不当な命令ではないという結論で、Xの訴えは認められなかった。



国鉄鹿児島自動車営業所事件のポイント

労働契約によって労働者はその労働力をどのように使うかを使用者にゆだねている。

当然ながら、労働契約の範囲を超える事柄について労働者を従わせることはできない。

また、法令に違反するような内容であったり、懲罰目的でなされたり、労働者の人格を侵害するような命令も認められない。

本件に関してはXの訴えは認められなかったものの、Xは夏場の炎天下の中で火山灰の除去作業を1人で10日間行っており、そこに業務上の必要性があったかというと、否定的な意見も散見される。

また、本件以降の判例では業務命令の違法性が認められる事件も多かったことから、労働者にとって不利益が大きい業務命令を下す際には、背景や経緯を含めて慎重になるべきということが言える。

おわり

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