高知県観光事件の概要
Y社はタクシー業を営む会社であり、Xはタクシー乗務員としてY社に勤務していた。Xの労働時間は、午前8時から翌日午前2時まで。そのうち2時間は休憩時間。隔日勤務。賃金は、タクシー料金の売り上げに一定の率を乗じた歩合給が支払われていた。ただ、時間外労働や深夜労働を行った場合にも、同じ歩合給以外の賃金は支給されていなかった。それを不服としてXは訴えを起こした。
最高裁まで争われた結果、Xの訴えは認められた。Y社には時間外及び深夜の労働に対して割増賃金を支払う義務があるとされた。
高知県観光事件のポイント
高知県観光事件のポイントは、タクシー乗務員の歩合給の中に割増賃金も含まれるとみなすことが適法かどうかについての判断である。判断には、定額残業代の支給方式が認められる要件が強くかかわってくる。定額残業代とは、あらかじめいくらかの時間分の残業代を固定して、基本給に含んだ形で毎月支給する方式だ。
定額残業代の場合、支払われる固定給の中で「通常の労働時間に対する支給」と「割増賃金の部分」が判別できることが必要である。当然、割増率も法定の基準を満たす必要がある。
高知県観光事件においては、歩合給の額が時間外、深夜労働を行った場合も増額されなかった。そのため、通常の労働時間の賃金と判別することができないとされた。そのことを理由に、歩合給の支給の中に割増賃金も含まれているとは言えないというのが判決の要旨である。
定額残業代は一般的に求人条件には見られる。通常の労働時間に対する賃金と割増賃金が判別できるかと、法定の基準を満たす割増率で支払われているかには気を配る必要がある。
そして、この2つのポイントは、高知県観光事件のような完全歩合制の給与形態であっても、決して例外ではないということが示された判例である。
おわり
こんな判例の記事もあります→【5分で読める労働判例】読売新聞社事件~就労請求権~
こんな判例の記事もあります→【5分で読める労働判例】テックジャパン事件~固定残業代~
コメントを残す