【5分で読める労働判例】片山組事件~労務受領拒否~

この記事では片山組事件について書いていきます。本件は労務受領拒否、すなわち労働者が働けるという申し出をしていたにもかかわらず、使用者がその就労を拒否した事案についての裁判です。

片山組事件の概要

Y社は土木建築の設計・施工・請負等を行う株式会社であり、XはY社に雇用されて以来、工事現場における現場監督として勤務していた。

ある時Xはバセドウ病との診断を受け、臨時的に図面の作成などの事務作業に従事していた時期があった。その際、Y社から現場監督としての業務に戻るように命令を受けたが、Xは病気を理由にその命令を拒んだ。

Y社は現場監督業務に就けないのであれば自宅治療するようにとの命令をXに下したが、Xは事務作業であれば問題なくできるとして、主治医の診断書も提出した。

しかしY社はそれを認めず、自宅治療命令を継続して、不就労期間中のXは欠勤扱いとして賃金を支給せず、賞与も減額支給した。

これを不服としてXは訴えを起こし、最高裁までもつれた結果、Xの訴えが概ね認められる形となっている。

片山組事件のポイント

本件のポイントはXのように病気などで会社から命じられた業務に就くことが困難な場合でも、他の業務であれば可能な場合には会社はそれを認める義務があるかということだ。

XとY社の間で交わされていた雇用契約は職種を限定するものではなく、基本的にはXは配置も含めてY社の指示に従うことが前提とされる。配置転換を拒むことは合理的な理由が無ければ難しいが、今回は疾病を原因としてその例外を示した形だ。

判決では、①Xが配置される現実的な可能性がある業務で②Xがその業務の提供を申し出ていることを前提に、Y社はXをその業務に就かせる必要があるとしている。

「配置される現実的な可能性」という言葉の解釈は難しいが、自社の人事制度上まったく不可能なものでなければ、基本的には可能性があると考えるのが無難だろう。

最高裁の考え方として、労働者間の公平性を重視した判決であったということができる。

組織内でどの職務に配置されるかという問題は、職務を限定しない雇用契約では運にも近いところがある。同じ病気にかかったとしても、ある職務に就いていれば仕事が続けられ、別の職務では続けることができない、というような状況があるのは公平性に欠けるという考え方だ。

その公平性を担保するためにも、労働者が仕事を続けることができる職務があり、かつその意思を示しているのであればそれに応じるべきということである。

また本件は職務の限定が無い雇用契約であったが、職務の限定がある雇用契約の場合はどうなるかというと、これに関しては明確な判断枠組みは示されていない。ただ、判例を見るに限定があれば労務受領拒否が認められるかというと、そうではないと言えそうだ。

 

おわり

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