【5分で読める労働判例】兼松事件~男女間の格差~

兼松事件の概要

Xらは昭和32年から昭和35年にかけて、総合商社であるY社に入社した女性従業員である。当時、Y社は男性と女性で異なる採用方法、賃金体系を採用しており、男性の方が賃金体系が高く設定されていた。

Y社は昭和60年に人事制度を改め、男女をコース別に雇用体系を分けたうえで、コース転換制度を設けた。しかしコース転換の条件としては「能力・実績優秀な者」等の条件があったり、本部長の推薦を受けることも前提となっており、誰でも転換できるというわけではなかった。

その後も平成9年に制度を改めたものの、やはり能力等の要件はコース転換に必要なままだった。

Xらは平成13年、自分たちと同期の男性社員との賃金格差は違法な男女差別であるとして差額の支払いを求めて提訴した。

最高裁ではXらの訴えは完全ではなかったものの一部は認められ、Y社は損害分の支払いをすることとなった。

兼松事件のポイント

本件は男女の採用や賃金の格差について争われた裁判で、男女でコース(職掌)を分けた人事制度において、その格差がどれくらい不合理とされるかという内容である。ちなみに、男女別のコース管理については男女雇用機会均等法7条で現在は禁止されているが、この改正があったのは平成11年で、意外と最近という印象だ。

労働法では比較的採用の自由は企業には広く認められており、本件の時代背景も考えると当時は男女間でのあからさまに差別的な取り扱いもさして違法とは言えないものであったと考えられる。

上述の通り、平成11年の男女雇用機会均等法の改正で男女別のコース管理は禁じられている。それ以前の管理においては以下の点がポイントになる。

  1. コースの間で職務内容に明確な違いがあるか
  2. コース転換制度の合理性

一つ目については、男女でコースが分かれていたとしてもそのコースの違いが明確に業務内容の違いに繋がっていれば、待遇の格差は業務内容の違いに起因するものとされる(若干こじつけ感がある気もする)

また二つ目については一つ目を補完するような形ではあるが、コース転換制度を設けていたとしても転換の実績がほとんど無かったり、転換の条件が客観性を欠く場合は不合理であるとされる。その場合は男女間での格差を是正するためのものとは見られず、「公序良俗に反する」として民法に違反してくる可能性もある。

これらの要素は現在の同一労働同一賃金の考え方にも通ずるものであり、「待遇の違い=業務内容の違い」であるということを説明できる体制が企業には求められる。

かなり時流が変わったとはいえ、現在でも総合職、一般職というコース別管理をしている会社では男女比は偏っているケースも多く、また総合職の中でも差別的な取り扱いをする会社もあるのが事実だと思う。

同一労働同一賃金は雇用期間の定めの有無や所定時間による差別を禁じるが、それ以外の部分でも企業は同様の考え方は意識する必要がある。

 

おわり

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です