
朝日放送事件の概要
X社はテレビの放送事業を営む会社であるが、番組制作の映像撮影、照明、音響などの業務は外部の会社との間に請負契約を結んでいた。 委託先の会社からはX社に従業員が派遣され、作業内容やスケジュール等について基本的にはX社の指示を受けて勤務していた。 それらの業務委託先であった会社の一部の従業員は労働組合に加入していた。そして、その労働組合がX社に対して賃上げ、一時金の支給、直接雇用、休憩室の設置等の要求を掲げて団体交渉を申し入れた。 しかし、X社はあくまで業務委託を行っているのみで自身は使用者ではないとして団体交渉を拒否。労働組合はこれを不当労働行為※として不服を申し立て、それの取り消しを求めてX社が訴えを起こしたのが本件である。 最高裁までもつれた裁判ではあったが、X社が使用者であることは認められ、不当労働行為の有無について再び審議を行うように命じる判決が最高裁では下されている。 ※不当労働行為・・・会社側が労働組合の結成や正当な活動を妨害する目的で行う行為。労働組合法で禁じられている

朝日放送事件のポイント
本件のポイントは労働組合法上での「使用者」の定義だ。労働組合法上の使用者とはすなわち、団体交渉の当事者になるということも言える。 まず、結論としては今回のX社のケースではX社は使用者として認められる。最高裁の判決でも、部分的にでも雇用主と同程度に決定権限を持つ場合はその部分においては使用者となり得るとされている。 この場合、雇用主とは委託先の会社のことだが、必ずしも雇用主=使用者ではない。 今回のケースで言えば、X社が決定権限を有していた、勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境などについては少なくともX社が使用者として団体交渉に応じる義務がある。 ちなみに、本件は労働者派遣法が制定される以前の事案であり、労働者派遣法では基本的には雇用主である派遣元のみが使用者であると整理されている。しかし、派遣という形態では派遣先の使用者性はより強まることもあり、これに関しては今も議論が続いているそうだ。 少なくとも派遣労働者の労働時間の管理は派遣先の責任事項であり、更にはその責任範囲がどこまで広がるのかは個別具体的な事例に基づいて判定されることになると思われる。 おわり

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