日本の終身雇用は今後どうなっていくのか

日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が、13日に記者会見で終身雇用について、「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べました。

他にも「今の日本を見ていると雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」との考え方も示しました。

この発言を元に、日本型の雇用慣行の行く末について、若干下の記事と被る部分はあるのですが、私なりの考えをこの記事で述べます。

終身雇用とは

まず一応説明しておくと終身雇用とは、企業が倒産しない限りは、同一企業で定年まで雇用され続けるという、日本独自の雇用慣行です。

1900年代から1910年代にかけて、日本では熟練工の転職率がきわめて高く、5年以上の勤続者は1割程度だったそうです。企業側としては、短期転職は大変なコストであるため、大企業や官営工場が足止め策として定期昇給制度や退職金制度を導入。年功序列を重視する雇用制度の基盤が築かれていきました。

その後、高度経済成長時代すなわち、とにかく大量生産が必要で作れば作るほど売れる時代に置いては、多くの企業は安定した労働力の確保が重要課題でした。

そのため、上述の年功序列制度と合わせて、特に大企業では長期雇用の慣習が一般化していきます。1970年代に判例として確立した整理解雇の四要件(*)や、労働組合の団結によって、使用者の解雇権はかなり制限されていきます。

こうして、日本の終身雇用は形作られていきますが、バブル崩壊頃を契機に少しずつ風潮は変わってきて、今や風前の灯というような流れです。

*整理解雇の四要件

1)人員整理の必要性

2)解雇回避努力義務の履行

3)被解雇者選定の合理性

4)解雇手続きの妥当性

過去はこれらのどれか一つでも満たしていないと「解雇権の濫用」とされて無効になる判断が主流でしたが、近年ではこの記事のテーマである日本型雇用慣行の揺らぎも踏まえて、何かが欠けても4つを総合的に考慮して相当と認められれば有効とするような判例も増えています。

終身雇用と年功序列の関連性

年功序列については、そこまで詳しく説明する必要はないかと思うので説明は割愛しますが、年功序列は終身雇用と密接な関係を持っています。ちなみに、この2つに企業別の労働組合を加えると、「日本的経営の三種の神器」が出来上がります。企業別労働組合については次章で述べます。

前章で述べた通り、一昔前まで企業はとにかく安定して労働力を確保したいという課題がありました。

それに伴って、とにかく業務ではなく会社そのものに従業員を従属させていく制度が整備されていきます。

年功序列は、長期間勤続しないと労働者側にはうまみがありません。若手のうちは給料が不当なぐらいに低いこともあるかもしれませんが、それでも勤続を重ねるうちに上がっていけるという希望があるからこそ、長期勤続のモチベーションが保てるのです。

そして、そのモチベーションを保ち続けるには、終身雇用が保障されている必要があります。待遇UPの為に、我慢して働いてきてやっと上がってきたと思ったらクビ切られたりしたら、今まで我慢してきたのは何だったのってなりますよね。

労働者にとっても、安定した雇用環境で働くことができ、会社側は安定した労働力を確保できます。そういう意味では、経済成長期という社会情勢の中ではWin – Winの関係であったのかなと思います。

企業別労働組合について

日本の雇用慣行の三種の神器として、企業別労働組合があります。欧米では、企業別に労働組合があるのは一般的ではなく、業種ごとに労働組合が存在しています。

日本型の企業別組合にもメリットはあります。

経営と緊密な連携を取ることができますし、組合員の困りごとにも迅速に対応することが可能です。

しかしながら、昨今の日本ではこの企業別労働組合の良さがかなり薄れている、社会情勢がそうさせているように思えてなりません。

そもそも、企業別労働組合の組織率(全雇用者に占める労働組合員の割合)は下がる一方で、昨年6月時点で17%でした。つまり、労働者の10人に2人も労働組合に加入していない状態です。

この状態で労働組合の有用性を訴えたところで、耳を貸す人がどれだけいるのでしょうか。

さらに、経営との緊密な連携をメリットとして挙げましたが、ともすればそれは経営との蜜月関係に簡単に変貌します。

そうなってしまった労働組合は、もはやただの既得権益団体と化してしまいます。

さらにさらに、ここが最も私が害悪だと思っている部分ですが、組合員一律でのベースアップを要求しようという姿勢です。

特に近年はアベノミクスに端を発する好景気に日本は活気づき、それに伴って多くの大企業でベースアップが行われました。

しかしながら、この好景気もこれから長く続くかは疑問です。

先日読んだ本に書いてありましたが、人間が生涯で最も支出が多くなる時期は46歳〜50歳の間だそうです。

この世代の人口ボリュームから大体の景気動向が予測できるということです。

日本はここ数年間、1971〜1974年生まれの団塊ジュニアと呼ばれる世代がまさにここに当たっています。それだけが好景気の理由というのは暴論ですが、無関係ではないと思います。

そう考えると、この好景気の先行きには不安感は拭えません。

話を戻します。そんな景気の不安感や、冒頭に書いた終身雇用の破綻の流れの中で、従業員一律ベースアップなんていうのは本当にバカげた話です。

企業は優秀な人材を確保するために優秀な人材には今までより高い給与を提示する必要が出てきます。雇用が流動化すると給与は間違いなく吊り上がります。

当然、その吊り上げる原資を確保するために、優秀でない人の給与は下げざるを得ません。

今はまだいいかもしれませんが、数年後にも一律ベースアップとか要求してくるような組合は、社会情勢が見えていないとしか思えません。

終身雇用の今後

さて、ここまでの内容を踏まえて、終身雇用はこれからどうなっていくのでしょうか。

薄々皆さん感じているとは思いますが、終身雇用は近いうちに過去の遺物となるでしょう(あるいは既になっている?)

経団連の会長やトヨタの社長など、重要人物がこれだけ畳み掛けるように発言を繰り返しているからには、何かしらのコンセンサスが存在しているのは想像に難くありません。

社会全体にそういう流れが生まれてくるのは間違いないでしょう。

では、終身雇用がなくなるとはどういうことか。

先述の使用者の解雇権の規制がゆるくなるでしょう。今は欧米諸国に比べてもかなり厳しい規制があります。欧米を盲目的に礼賛するつもりもありませんが、やはり日本の今の規制は厳しすぎて健全さを失っているように感じます。

とはいえ、大量リストラがあっちこっちで起こっても困るでしょうし、現実的には貢献度の低い、能力の低い社員の給与は下げていくという対応が現実的です。

こちらも、労働条件の不利益変更として現状は強い制限がかかっていますが、今後は多少ゆるくなってくるであろうことが予想されます。

解雇権と不利益変更の規制がゆるくならない限り、終身雇用はなくなりませんから。

また、賃金制度ももっとドラスティックになります。年功序列は廃し、それこそ同じ年齢、勤続年数でも、給料が倍ぐらい違うなんてことも普通に起こり得ます。

職能等級という「身分」ではなく職務等級(ジョブグレード)の「成果」に対して報酬を支払う風潮も強くなるでしょう。

そうすると、もはや「正社員」である必要性が薄れてきます。社会保険も別にパートタイマーでも入れますし。

有期雇用契約や業務委託など、多様な雇用形態で働く人が増えていくでしょう。

まさに雇用の流動化ですね。

私見ですが・・・

さて、ここまで述べたような変化は、別に私独自の意見というよりは社会情勢から読み取り、予想することがある程度可能かなと思います。

では私はこのような変化についてどう思うかというと、正直に言って不安です。

不安というのは別に私個人の話ではなくて、日本の雇用が欧米化していくことが正しいのだろうかという問いに対してです。

流動的な人材市場、ジョブ型の雇用などはまさに欧米型ですが、欧米型にもデメリットはあります。

例えば、高い失業率であったり、給与の格差の大きさがそれに当たります。

私の思いとしては、幸せに働く人を少しでも多く増やしたいという考えが根底にあります。

働く幸せはいろいろな形があります。成果を出すことに幸せを感じる人もいれば、気心の知れた仲間を支えることに喜びを見出す人もいるでしょう。

欧米型の雇用が果たしてそれらをカバーできるのでしょうか。

良くも悪くも、今までの日本は先進国の中でも異質でした。

そこから欧米型への移行は、多くの労働者にとってストレスフルでしょう。日本社会が上手く乗り切っていけるのかというのは不安が尽きません。

ただ、同時にチャンスでもあります。言い方を変えれば、古い雇用慣行に縛られずに腕一本で稼げる時代がやってくるのです。

自分自身のスキルを磨き、それをフル活用して自分の幸せな働き方を模索できる時代です。

その努力を怠らない人には、今回の変化は歓迎すべきものになるでしょう。

幸せに働ける人が1人でも増えるように、今後も私にできる取り組みをコツコツ継続していきます。

差し当たっては、新卒の学生たちにこの考え方を少しずつ刷り込んでいくところから始めていこうかな笑

おわり

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