私は、人事労務関係にはそれなりに携わってきましたが、採用には本格的に触れたことが今までありませんでした。
しかし、今年の4月から新卒採用担当を拝命し、ついに採用に携わるチャンスがやってきたのです。
これを機に採用という仕事を自分のものにするためにガンガン行動していきます。
そんなこんなで、ブログもちょっと採用関連が増えてくるかもしれません。
さて、この記事ではコンピテンシー面接について考えていきます。
私も採用担当になってから何回か面接に同席させてもらいましたが、なかなかに難しい。なんとなく直感でこの子は良いな悪いなとは感じるものの、具体的に何が良いのか悪いのかを言語化するのが難しいのです。
コンピテンシー面接はその一助になるのではと考えながら、この記事を書いております。
ちょうど、先輩から「まんがでわかるコンピテンシー面接」という本を借りて読んだので。
漫画だったので1時間ぐらいで読めました。読書記録というほどでもないので、コンピテンシー面接に対する自分の考察とともにまとめていきます。
①コンピテンシーとは
「コンピテンシー」という言葉は、採用に限らずHR関連に携わる人であればたいてい耳にしたことがあるでしょう。ちなみにこのマンガでは「成果につなげられる」能力というような表現を使っています。
他には、人事考課の際には潜在能力を図るのか発揮能力を図るのかという考え方は重要ですが、この場合の発揮能力というのがコンピテンシーと同義ですね。
一般的に「能力」というと例えばTOEICで何点取ってます!とか、プログラミングできます!みたいなのがわかりやすいですが
TOEICでどれだけ高得点取ってたって仕事で英語使ってなかったり、プログラミングができるからってスーパーでレジ打ちしてたら、それらの能力は「発揮」されてませんよね。
つまり成果を出していない能力はコンピテンシーではないのです。
逆に考えれば、先ほど述べた通り、コンピテンシーとは成果に直結した能力、行動であると定義づけられるのがわかります。
②コンピテンシー面接の目的
①から直結しますが、コンピテンシー面接の目的は、「成果を出せる人材を採用すること」です。
すごい高学歴なのに、周りの意見を批判ばっかりして建設的な意見を出せないような人とか、面白い話をするのは上手いのにいざ商談となるとポイントを抑えられずに話がまとまらない人など
潜在能力としては高いものを持っていても発揮できていなければ宝の持ち腐れです。
自分の能力を状況に合わせて的確に発揮できる能力を持っている人を採用するのが、コンピテンシー面接の目的なのです。
③コンピテンシー面接の流れ
目的を達成するために、コンピテンシー面接ではなるべく多くの「行動事実」を集める必要があります。候補者が何を考え、どのような行動をとったのかを具体的に詳細に詰めていくのです。
コンピテンシー面接の基本的な流れは以下の通りです。
1)面接のテーマ・課題を確認
最も力を入れて取り組んだテーマ・課題を具体的に確認します。
2)全体の大まかな流れと結果を確認
このあとの質問の準備として、大まかな流れや、そのテーマはどこまで進んでいるのか、結果としてどうなったのかを確認します。
できる限り時系列に話してもらうように誘導したほうがわかりやすいでしょう。
3)全体のプロセスの中から場面を特定
場面を特定というのは、長いプロセスの中のワンシーンにだけ焦点を当てるという意味です。長い期間に焦点を当ててしまうと「だいたいこのようなことをやっていた」というような感じで行動の概要しか得られないことが多いです。
なので、ワンシーンに着目してその場での候補者の行動を掘り下げていきます。
ちなみに、時間がたっぷりある場合はプロセスの第一段階から順に追っていくのですが、時間の制約がある場合は「最も重要だった、最も困難だった」場面を聞き出して、フォーカスしていきます。
4)特定した場面の中での行動事実を聞き取り
場面が特定できたら、その場面で何を考え、具体的にどんな行動をとったのかを聞いていきます。
その際のポイントとして、以下の3つが挙げられます。
・単数形で聞く
「チームでこういうふうにしました」等という答えは参考になりません。欲しいのは「候補者本人が」どのように行動したかという事実です。
・HOWやWHYを聞く
何をやったのか(WHAT)だけでなく、なぜそれをしようと思ったのか(WHY)、どのようにしたのか(HOW)も非常に重要です。候補者の言葉が足りなければ、積極的に質問していきましょう。
・過去形で聞く
コンピテンシーはあくまで「行動した」事実を聞くものです。「これからこうしようと思います」という意思や、「誠意をもって取り組みました」というようなポリシーは本筋とはズレています。
実際に「行動」して、どんな「成果」を出したのかにスポットを当てましょう。
この行動事実の聞き取りも、できるだけ多く引き出したいところではありますが、時間の制約によっては最も苦労した部分について深く聞き出していきましょう。
④コンピテンシー・レベルの評価
さて、面接で行動事実を聞き出したら、いよいよそれを元にコンピテンシー・レベルの評価に移ります。
著者は、コンピテンシー・レベルを5段階に分けて解説しています。
(レベル1)受動行動
「誰かに指示されたことをそのとおりにやった」とか「やらざるを得ない状況に追い込まれたからやった」というレベルです。
自分で判断し、工夫していないので、このレベルの行動だけの人を採用しても成果を生み出す確率は高くないでしょう。
(レベル2)通常行動
その状況であれば誰もがそうするであろう行動、つまり当たり前の行動です、
レベルが高いとは言えませんが、言われなくても動いているという時点でレベル1よりも上になります。
コンピテンシー面接においてレベル2が多く挙げられること自体は割と自然なことですが、レベル2の行動では成果に繋がらないような場面において、より高いレベルの行動発揮が見られるかどうかが重要です。
(レベル3)能動行動
レベル2までの行動に「自分なりの判断や工夫を加えているか」に着目します。
このレベルからが企業の中で成果を生み出すレベルにあると言えるでしょう。
(レベル4)状況変容行動
レベル3の行動をとっている上で、その行動を自らの置かれた状況の範囲内で取っているのか、それとも状況そのものに働きかけ、それ自体を変化させているのかが重要です。
当然ながら、状況を変化させる行動の方が価値が高く、レベル4として認められます。
レベル3の行動を取れる人材は、安定した環境の中では成果を生み出せますが、困難な状況に陥った際にそれを克服できない可能性が高いです。レベル4に来ると、置かれた状況に関わらず安定した成果を期待できる人材と言っていいでしょう。
(レベル5)状況創造行動
私が今携わっている新卒採用では、レベル5の行動にはそうそうお目にかかれないと考えます。
これは、状況を変えるのではなく、まったく新たな状況を作り出すことによって、放っておいても成果がそちらになびいてくるようにしてしまう行動です。
やはり新卒採用においてはレベル3が見られれば及第点。レベル4まで見られれば是非とも採用したいレベルといって差し支えなさそうです。
⑤まとめ
コンピテンシー面接について今回は情報をまとめました。
この記事は具体的な手法の話ではありますが、面接で重要なのは極力面接官の主観の要素を削ぎ落とすことだと考えます。
特に、経験が長い面接官ほど自分の「人を見る目」を過信しがちです。そもそも、30分や1時間話しただけでその人の本質や将来を見極め切れるはずがありません。
そりゃあ、たまには「即採用だ!」と思うような人もいるでしょうが、そんなのは希です。大抵パッと見ではそこまで差のない人たちから合格者を見極めるわけですから、主観が入れば入るほど、面接官によって合否に差が出ます。
その差の大きさはそのまま機会損失になると私は考えています。
恥ずかしながら、私が勤める会社の面接も、現状は主観だらけです。それを無くすためには面接官同士が共通のモノサシを持つことが重要です。
企業理念、採用ポリシーといったものもモノサシとして有用です。コンピテンシーも有効なモノサシのひとつでしょう。
自社で最高に活躍してくれる人材を採用することが、企業にとっても本人にとっても幸せへの近道ですから、少しずつでも当社の面接の精度を高めていきます。
おわり
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