労働審判制度についてざっくりとまとめてみる

この記事では労働審判制度について、基本的な知識をまとめていきます。

労働審判制度は、労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事紛争を対象に、労働関係の専門的知識や経験を取り入れて迅速かつ適正な解決を図ることを目的とします。

訴訟による裁判とは違います。

労働審判制度の背景

労働審判制度は平成18年に施行されました。経済成長が止まり、日本の雇用情勢もより複雑化して来ていた時代です。

それまでの労働裁判は期間が長く、主張の立証も膨大で大変に手間のかかるものでした。そのため、労働問題が解決にいたらず、埋もれてしまうという問題がありました。

一方、紛争調整委員会のあっせんという制度があり、こちらはかなり簡易ではあるのですが、その分強制力が弱く、調停がまとまらないケースも多くありました。

それらの長所短所を補い合うようにして生まれたのが労働審判制度です。

労働審判の流れ

実際に紛争が起こり、当事者が書面により裁判所に申し立てをすることによって開始されます。

審理は裁判官(労働審判官)1名と労働関係の専門的知識経験を有する者(労働審判員)2名から構成される労働審判委員会が行います。

原則として、審理は3回以内の期日において終結しなければなりません。

1回目で当事者の陳述から争点・証拠の整理をし、可能な証拠調べを行います。

やむを得ない事情がある場合を除き、当事者は2回目の期日終了までに主張及び証拠書類の提出を終えなければなりません。

労働審判の途中で調停による解決に至れば、それで終わりになりますが、そうでなければ委員会の決議を以て審判を下します。

決議は審判官と審判員2名の計3名の過半数の意見によって決まります。

当事者に異議がなければ、審判は裁判上の和解と同一の効力を持つものとされます。

2週間以内に異議が申し立てられた場合は審判は無効、通常訴訟に移行してより本格的な審理にかけられていくことになります。

労働審判手続は原則として非公開ですが、労働審判委員会の審議は、相当と認められる者の傍聴を許すことができます。

労働審判の現在

最高裁判所が集計しているデータによると、2016年には3,414件の労働審判が起こっています。制度開始初年は877件であり、年々増え続けています。

98.8%は3回以内の期日で終了し、平均審理期間は2.6ヶ月となっており、迅速な手続きの進行が実践されているといえるでしょう。

また、72.4%は調停が成立、5.3%は労働審判・異議申し立てなしで終了しているそうです。調停で解決する割合が高いのですね。

いずれも2016年のデータです。

まとめ

労働審判は、当事者本人から直接口頭で事情を聞きつつわかりやすい言葉で説明するという口頭主義・直接主義に基づいており、そのわかりやすさが利用者の評価を高めています。

労働紛争の解決法としては、裁判に比べると労使ともにメリットのある制度といえるのではないでしょうか。

 

 

おわり

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